電験三種 R4年度下期 法規 問12 問題と解説

 問 題     

定格容量500kV・A、無負荷損500W、負荷損(定格電流通電時)6700Wの変圧器を更新する。更新後の変圧器はトップランナー制度に適合した変圧器で、変圧器の容量、電圧及び周波数仕様は従来器と同じであるが、無負荷損は150W、省エネ基準達成率は140%である。

このとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

ただし、省エネ基準達成率は次式で与えられるものとする。

ここで、基準エネルギー消費効率注)は1250Wとし、Wiは無負荷損[W]、WC40は負荷率40%時の負荷損[W]とする。

注) 基準エネルギー消費効率とは判断の基準となる全損失をいう。

(a) 更新後の変圧器の負荷損(定格電流通電時)の値[W]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 1860
  2. 2450
  3. 3080
  4. 3820
  5. 4640

(b) 変圧器の出力電圧が定格状態で、300kW遅れ力率0.8の負荷が接続されているときの更新前後の変圧器の損失を考えてみる。

この状態での更新前の変圧器の全損失をW1、更新後の変圧器の全損失をW2とすると、W2のW1に対する比率[%]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、電圧変動による無負荷損への影響は無視できるものとする。

  1. 45
  2. 54
  3. 65
  4. 78
  5. 85

 

 

 

 

 

正解 (a)-(5), (b)-(3)

 解 説    

(a)

本問は、問題文に計算式が与えられています。まずはこの式に更新後の各種の数値を代入して、負荷率40%時の負荷損WC40を計算すると、次に示す(1)式のようになります。

ここで、問われているのは40%時の負荷損WC40ではなく、定格電流通電時の負荷損(WC100とします)です。負荷損の大きさは負荷を流れる電流の2乗に比例するため、WC100は次のように算出できます。なお、無負荷損は電流の値に関わらず一定です。

よって、正解は(5)となります。

もし負荷損と無負荷損の違いについて理解できていない場合は、変圧器の損失・効率のページを確認してください。今回のように法規科目で出題されるのは珍しいですが、機械科目の計算問題などでは頻出テーマのひとつです。

(b)

問われているのはW2のW1に対する比率[%]なので、次のように表すことができます。

  • W1、W2:更新前・後の変圧器の全損失 [W]
  • W1i、W2i:更新前・後の変圧器の無負荷損 [W]
  • W1C、W2C:更新前・後の変圧器の負荷損 [W]

(3)式において、無負荷損は負荷の有無や大小に関係なく一定の値をとります。つまり、問題文より、以下の(4)式、(5)式が成り立ちます。

続いて、負荷損について考えます。

問題文より、更新前の変圧器では、定格容量が500[kV・A]で、負荷損(定格電流通電時)が6700[W]です。一方で、設問(b)では300[kW]で遅れ力率0.8ということから、このときの皮相電力S[kV・A]は次のように計算できます。

(6)式から、定格容量500[kV・A]に対して皮相電力375[kV・A]となるので、負荷率αは次の通りです。

ここで、定格電流通電時(負荷率100%)のときの負荷損は、更新前の変圧器では問題文より6700[W]であり、更新後の変圧器では設問(a)の(2)式より4643[W]です。

よって、設問(a)の(2)式と同様の計算により、(7)式を使って更新前・後の変圧器の負荷損W1C、W2C[W]を計算することができます。

以上より、(4)式、(5)式、(8)式、(9)式の計算結果を(3)式に代入して計算を進めると、問われているW2のW1に対する比率[%]を求めることができます。

よって、正解は(3)となります。

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