電験三種 R4年度下期 電力 問12 問題と解説

 問 題     

次の文章は、配電線路の電圧調整に関する記述である。

配電線路より電力供給している需要家への供給電圧を適正範囲に維持するため、配電用変電所では、( ア )などによって、負荷変動に応じて変電所二次側母線電圧を調整している。

高圧配電線路においては、柱上変圧器の( イ )によって低圧配電線路の電圧調整を行っていることが多い。

また、高圧配電線路のこう長が長い場合や分散型電源が多く接続されている場合など、電圧変動が大きく、配電用変電所の( ア )や柱上変圧器の( イ )によっても供給電圧を許容範囲に抑えることが難しい場合は、( ウ )や、開閉器付電力用コンデンサなどを高圧配電線路に施設することがある。

さらに、電線の( エ )によって電圧降下を軽減する対策をとることもある。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •    (ア)       (イ)       (ウ)         (エ)
  1. 負荷時電圧調整器  タップ調整  バランサ          細線化
  2. 計器用変成器    取替     ステップ式自動電圧調整器  細線化
  3. 負荷時電圧調整器  タップ調整  ステップ式自動電圧調整器  太線化
  4. 計器用変成器    タップ調整  ステップ式自動電圧調整器  細線化
  5. 負荷時電圧調整器  取替     バランサ          太線化

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

( ア )には「負荷時電圧調整器」が入ります。これは、変電所の二次側母線電圧を負荷変動に応じて調整する機器です。

「計器用変成器」は、送配電系統などの高電圧・大電流を低電圧・小電流に変成して指示計器にて計測するための機器であり、電圧調整には用いられません。

( イ )には、「タップ調整」が入ります。これは、柱上変圧器の巻線の接続位置を変えることで変圧比を変更し、柱上変圧器の二次側の電圧を調整する方法です。

「取替」は、柱上変圧器の一次側と二次側の巻線を入れ替えることで、変圧比を変更する方法です。これによって、低圧配電線路の電圧調整を行うことができます。例えば、一次側が6600V、二次側が200Vの変圧器を、一次側を200V、二次側を6600Vに入れ替えるような感じです。

今回は高圧配電線路の話であり、高圧と低圧の関係を逆転させるようなダイナミックな電圧調整の話はしていないので、「取替」ではなく「タップ調整」を選ぶのが妥当です。

( ウ )には、「ステップ式自動電圧調整器」が入ります。ステップ式自動電圧調整器(SVR)は、自動的に電圧を検出してタップを切り替える機能を持っており、配電線路の電圧を安定に維持するために設置される装置です。

「バランサ」は、バランサというのは、単相3線式配電線路の受電端に取り付ける、巻数1:1の単巻変圧器のことです。これを取り付けることによって、電圧を平衡させるとともに線路損失を減らすことができます。これは受電端(低圧)で用いられるものであるため、高圧配電線路には向きません。

( エ )には「太線化」が入ります。電線の断面積を変えることで電線の電気抵抗を変えることができますが、電線の断面積が大きいほど、電気抵抗が小さくなり、電圧降下が小さくなります。

したがって、電圧降下を軽減するためには「太線化」が有効です。「細線化」は、電圧降下を増加させるため、電圧調整には不適切です。

以上から、( ア )は「負荷時電圧調整器」、( イ )は「タップ調整」、( ウ )は「ステップ式自動電圧調整器」、( エ )は「太線化」となるので、正解は(3)です。

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