電験三種 R4年度下期 電力 問11 問題と解説

 問 題     

次の文章は、電力の需要と供給に関する記述である。

電力の需要は1日の間で大きく変動し、一般に日中に需要が最大となる。一方で、( ア )の大量導入に伴って、日中の発電量が需要を上回る事例も報告されている。

需要電力の平準化や、電力の需給バランスの確保のために、( イ )発電が用いられている。また近年では、( ウ )電池などの電力貯蔵装置の技術が向上している。

天候の急変時や発電所の故障発生時にも周波数を標準周波数へと回復させるために、( エ )が確保されている。部分負荷運転中の水力発電機や( オ )発電機などが( エ )の対象となる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •  (ア)      (イ)   (ウ)    (エ)     (オ)
  1. ベース供給力  流込み式  燃料  運転予備力   原子力
  2. ベース供給力  揚水式   蓄   運転予備力   原子力
  3. ベース供給力  流込み式  燃料  ミドル供給力  火力
  4. 太陽光発電   揚水式   燃料  ミドル供給力  火力
  5. 太陽光発電   揚水式   蓄   運転予備力   火力

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

( ア )には「ベース供給力」か「太陽光発電」が入ります。

ベース供給力とは、ベース(基礎)となる電力供給力のことで、時間帯や天気などによって変動することなく、安定的に電力を供給できる能力をいいます。具体的には、原子力発電や水力発電(流込み式)などがこれに当たります。

ここで、( ア )の直後には「大量導入」と書かれていますが、原子力発電や水力発電が近年急速に増えているということはありません。むしろ、太陽光発電の導入事例が増えているため、( ア )には「太陽光発電」を入れるのが適切です。

( イ )には「流込み式」か「揚水式」が入ります。

流込み式発電は一般的な水力発電のことで、川の水を引き込んで水車を使って発電します。

一方、揚水式発電は、電力需要が低い夜間などに余剰電力を利用して水を高い場所に汲み上げ、電力需要が高い日中などに水を落として発電する仕組みです。需要電力の平準化や、電力の需給バランスの確保のために、揚水式発電が用いられています。

よって、( イ )には「揚水式」を入れるのが適切であると判断できます。

( ウ )で、ここでは電力貯蔵装置の話をしているので、これは蓄電池のことです。近年では、リチウムイオン電池やナトリウム・硫黄電池(NAS電池)などの電力貯蔵装置の技術が向上しています。蓄電池も揚水発電と同様、再生可能エネルギーの出力変動の調整などに役立ちます。

よって、( ウ )には「蓄」が入ります。

ちなみに、別の選択肢にある燃料電池は、水素と酸素との発熱反応を利用して電気エネルギーを作る発電方式です。「電池」という名称が紛らわしいですが、燃料電池は発電するためのものであって、電力を貯蔵するためのものではありません。

( エ )には「運転予備力」か「ミドル供給力」が入ります。

運転予備力とは、電力需要の急激な増加や発電所の故障などに対応するために、周波数を標準周波数へと回復させ、発電機の出力を上げることができる余力のことです。

一方で、ミドル供給力とは、電力の需要と供給のバランスをとるために、ベース供給力とピーク供給力の中間の役割を果たす発電所のことです。運転予備力が緊急時の措置を対象としているのに対し、こちらは通常時の電力需給に対応するものとなります。

よって、( エ )を含む文章では緊急時の話をしているので、( エ )には「運転予備力」が入ります。

( オ )に関して、( ア )の解説で示した通り、選択肢にある原子力発電はベース供給力に当てはまります。

別の選択肢にある火力発電は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やして発電する方法です。火力発電の場合は出力の調整が比較的容易であるため、こちらが運転予備力の対象となります。

よって、( オ )には「火力」を入れるのが適切です。

以上から、( ア )は「太陽光発電」、( イ )は「揚水式」、( ウ )は「蓄」、( エ )は「運転予備力」、( オ )は「火力」となるので、正解は(5)です。

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