電験三種 R4年度下期 電力 問7 問題と解説

 問 題     

次の文章は、変圧器の結線方式に関する記述である。

変圧器の一次側、二次側の結線にY結線及びΔ結線を用いる方式は、結線の組合せにより四つのパターンがある。

このうち、( ア )結線はひずみ波の原因となる励磁電流の第3高調波が環流し、吸収される効果が得られるが、一方で中性点の接地が必要となる場合は適さない。

( イ )結線は一次側、二次側とも中性点接地が可能という特徴を有する。

( ウ )結線及び( エ )結線は第3高調波の環流回路があり、一次側若しくは二次側の中性点接地が可能である。( ウ )結線は昇圧用に、( エ )結線は降圧用に用いられることが多い。

特別高圧系統では変圧器中性点を各種の方法で接地することから、( イ )結線の変圧器が用いられるが、第3高調波の環流の効果を得る狙いから( オ )結線を用いた三次巻線を採用していることが多い。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、(ア)~(エ)の左側は一次側、右側は二次側の結線を表す。

  • (ア)   (イ)  (ウ)  (エ)  (オ)
  1. Y-Y  Δ-Δ  Y-Δ  Δ-Y  Δ
  2. Δ-Δ  Y-Y  Δ-Y  Y-Δ  Δ
  3. Δ-Δ  Y-Y  Y-Δ  Δ-Y  Δ
  4. Y-Δ  Δ-Y  Δ-Δ  Y-Y  Y
  5. Δ-Δ  Y-Y  Δ-Y  Y-Δ  Y

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

( ア )について、この文章では、「第3高調波が吸収される」、「中性点の接地が必要となる場合は適さない」という記述から、Δ結線の特徴を示していることがわかります。

Δ結線は第3高調波電流をΔ巻線内に循環させるので、通信障害が少ないというメリットがあります。第3高調波とは基本周波数の3倍の周波数を持つ高調波で、これが機器に悪影響を及ぼします。つまり、Δ結線は悪影響が少なくて済む、ということです。

よって、( ア )には「Δ-Δ」を入れるのが適切です。

( イ )で、中性点接地が行えない( ア )とは反対に、こちらは一次側でも二次側でも中性点接地が可能です。つまり、一次側も二次側も、Y結線であるとわかります。

よって、( イ )には「Y-Y」を入れるのが適切です。

( ウ )と( エ )は、一方に「Y-Δ」が、他方に「Δ-Y」が入ります。それを判断するヒントは、昇圧用に用いられるか、降圧用に用いられるかという点です。

ここで、Δ結線は中性点接地ができず、低電圧回路にのみ使用できます。主に33[kV]以下の配電用変圧器に用いられます。一方のY結線は、中性点接地が可能である上、1相にかかる電圧が線間電圧の1/√3であるので絶縁がしやすいです。そのため、Y結線は高電圧回路でも使用できます。

よって、Y-Δ結線では、一次のY結線を高電圧回路に、二次のΔ結線を低電圧回路に接続します。これにより電圧は下がるので、送電線の受電端において使われます。

また、Δ-Y結線の場合は逆に、一次、二次の順に低電圧回路、高電圧回路に接続します。よって、電圧が上がるので、送電線の送電端で使われます。

以上から、( ウ )には昇圧用の「Δ-Y」が、( エ )には降圧用の「Y-Δ」が入ると判断することができます。

( オ )で、特別高圧系統ではY-Yの変圧器が用いられますが、このままではΔ結線がなく、第3高調波の悪影響を避ける術がありません。そこで、Y-Y結線に続く三次巻線にΔ結線をつないだ「Y-Y-Δ」とすることで、第3高調波の環流の効果を得ています。

よって、( オ )には「Δ」が入ります。

以上から、( ア )が「Δ-Δ」、( イ )が「Y-Y」、( ウ )が「Δ-Y」、( エ )が「Y-Δ」、( オ )が「Δ」となるので、正解は(2)です。

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