問 題
次の文章は、ナトリウム-硫黄電池に関する記述である。
大規模な電力貯蔵用の二次電池として、ナトリウム-硫黄電池がある。この電池は( ア )状態で使用されることが一般的である。
( イ )極活性物質にナトリウム、( ウ )極活性物質に硫黄を使用し、仕切りとなる固体電解物質には、ナトリウムイオンだけを透過する特性がある( エ )を用いている。
セル当たりの起電力は( オ )Vと低く、容量も小さいため、実際の電池では、多数のセルを直並列に接続して集合化し、モジュール電池としている。
この電池は、鉛蓄電池に比べて単位質量当たりのエネルギー密度が3倍と高く、長寿命な二次電池である。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- ア イ ウ エ オ
- 高温 正 負 多孔質ポリマー 1.2~1.5
- 常温 正 負 ベータアルミナ 1.2~1.5
- 低温 正 負 多孔質ポリマー 1.2~1.5
- 高温 負 正 ベータアルミナ 1.7~2.1
- 低温 負 正 多孔質ポリマー 1.7~2.1
解 説
本問は、ナトリウム-硫黄電池(NAS電池)に関する出題です。実用的にはよく用いられている設備である一方、電験三種の試験問題としては見かけないテーマなので、これは難易度の高い問題だといえます。
最低限として( イ )と( ウ )は正しく答えたいところですが、あとは運任せでも個人的には仕方ないと思います。
まず、ナトリウム-硫黄電池(元素記号のNaとSを合わせてNAS電池と呼ばれます)の最大の特徴は、大規模な電力貯蔵用の二次電池として用いられる点です。問題文の最後にも書かれているように鉛蓄電池の3倍のエネルギーを蓄えることができ、大容量かつ長寿命です。
( ア )について、NAS電池はナトリウムと硫黄を溶融状態に保つ必要があるため、300℃程度の高温状態を維持させます。よって、( ア )には「高温」が入ります。
( イ )と( ウ )について、電池では、陽イオンになりやすい(イオン化傾向の大きい)ものが負極にきて、そうでないものが正極となります。ナトリウムのイオンはNa+なので陽イオンです。一方、硫黄がイオンになるときはS2-であり、陽イオンにはなりづらいです。
よって、ナトリウムと硫黄の組合せで電池を作る際は、ナトリウムが負極側、硫黄が正極側となります。つまり、( イ )には「負」が入り、( ウ )には「正」が入ります。
( エ )について、選択肢には「多孔質ポリマー」と「ベータアルミナ」があります。
多孔質ポリマーは微細な穴が空いた物質であり、小さなイオンや分子が通過できる一方、高分子のような大きなものは通しづらいという特徴があります。
ここで、NAS電池で生成するのはナトリウムイオンと五硫化ナトリウム(Na2S5)なので、どちらも小さいため多孔質ポリマーを通過できます。よって、これでは電池の仕切りにはならず、不適当です。
ベータアルミナは、ナトリウムイオンなどの小さめの陽イオンを通すことができる一方、陰イオンや極性のない物質を通さないという特徴があります。そのため、これがNAS電池の仕切りとして適しているため、( エ )は「ベータアルミナ」となります。
( オ )は完全に知識問題となってしまいますが、NAS電池の起電力はセルあたり1.7~2.1[V]程度です。よって、( オ )には「1.7~2.1」が入ります。
以上から、( ア )は「高温」、( イ )は「負」、( ウ )は「正」、( エ )は「ベータアルミナ」、( オ )は「1.7~2.1」となるので、正解は(4)です。
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