問 題
有効落差80mの調整池式水力発電所がある。調整池に取水する自然流量は10m3/s一定であるとし、図のように1日のうち12時間は発電せずに自然流量の全量を貯水する。
残り12時間のうち2時間は自然流量と同じ10m3/sの使用水量で発電を行い、他の10時間は自然流量より多いQp[m3/s]の使用水量で発電して貯水分全量を使い切るものとする。
このとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 運用に最低限必要な有効貯水量の値[m3]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 220×103
- 240×103
- 432×103
- 792×103
- 864×103
(b) 使用水量Qp[m3/s]で運転しているときの発電機出力の値[kW]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、運転中の有効落差は変わらず、水車効率、発電機効率はそれぞれ90%、95%で一定とし、溢水(いっすい)はないものとする。
- 12400
- 14700
- 16600
- 18800
- 20400
解 説
(a)
問題文より、発電を終えた20時には貯水分全量を使い切って貯水量が0[m3]になり、20時から翌朝の8時までは自然流量10[m3/s]のペースで貯水していくことがわかります。そして8時から20時までは発電することでまた調整池が空になって24時間サイクルが1周します。
よって、最低限必要な貯水量V[m3]というのは、20時から翌朝の8時までの12時間(=60×60×12[s])に調整池に溜まっていく水の量ということになります。自然流量は10[m3/s]なので、これは以下のように計算することができます。
以上から、正解は(3)です。
(b)
水力発電において、使用水量Q[m3/s]で運転しているときの発電機出力P[kW]は、次の式で表すことができます。これは重要事項として押さえておくべき公式です。
- P:発電機出力 [kW]
- Q:流量 [m3/s]
- H:有効落差 [m]
- ηt:水車効率
- ηg:発電機効率
(1)式において、今回の場合はすでにH=80、ηt=0.90、ηg=0.95とわかっているので、流量Q(本問の場合はQp)がいくつであるかを考えれば答えが出せます。
Qpを求める方法はいくつかありますが、ここではそのうち一例を挙げて解説します。もし以下の解説と異なる計算をしていた場合でも、最終的なQpの値が合っていればしっかり理解できていると思うので、心配しなくて大丈夫です。
まず、調整池に水が溜まる分について考えると、自然流量は10[m3/s]なので、24時間の間に溜まる水量Vinは次のようになります。
水力発電によって消費する水量も、24時間の間には(2)式と同様に864000[m3]となります。しかし、時間帯によって使われる量が異なるため、下図のように分けて考えていきます。
上図の青色部分について、時間あたりの使用水量は10[m3/s]、時間は8時から20時までの12時間なので、この範囲での総使用水量は次のようになります。
一方、赤色部分について、使用水量は(Qp-10)[m3/s]、時間は8時から20時までのうち2時間を引いた10時間となります。そのため、この範囲での総使用水量は次のように表すことができます。
よって、溜まる水量である(2)式と、消費する水量である(3)式・(4)式の合計が一致するので、これらを等式で結んで計算すれば、Qpを算出することができます。
これでQpが求められたので、(5)式と設問で与えられた各数値を(1)に代入すれば、発電機出力P[kW]を計算することができます。
以上から、正解は(2)となります。
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