問 題
図1は、直流電圧源から単相インバータで誘導性負荷に交流を給電する基本回路を示す。負荷電流io(t)と直流側電流id(t)は図示する矢印の向きを正の方向として、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 各パワートランジスタが出力交流電圧の1周期Tに1回オンオフする運転を行っている際のある時刻t0から1周期の波形を図2に示す。直流電圧がE[V]のとき、交流側の方形波出力電圧の実効値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 0.5E
- 0.61E
- 0.86E
- E
- 1.15E
(b) 小問(a)のとき、負荷電流io(t)の波形が図3の(ア)~(ウ)、直流側電流id(t)の波形が図3の(エ)、(オ)のいずれかに示されている。それらの波形の適切な組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (ア)と(エ)
- (イ)と(エ)
- (ウ)と(オ)
- (ア)と(オ)
- (イ)と(オ)
解 説
(a)
負荷電流ioについて、まず図2の最初の時間帯はS1とS4がオンでS2とS3がオフになっていることから、下図の青矢印の軌跡を電流が流れます。これは図中に記入されている負荷電流ioと同じ向きに流れます。
また、その後はスイッチが反転して、S2とS3がオンでS1とS4がオフとなるため、赤矢印の軌跡を電流が流れます。これは図中に記入されている負荷電流ioとは逆向きに流れていることがわかります。
上図において、この回路には直流電圧1つに対して負荷1つしかなく、各パワートランジスタでは電力を消費しない(電圧が下がらない)ため、電源電圧がE[V]であれば、負荷の端子間電圧もE[V]になります。
ただし、上記で説明したように、タイミングによって負荷を流れる電流の向きが変わるため、負荷の電圧も周期的に+E[V]と-E[V]が入れ替わります。いずれにせよ、絶対値はE[V]であるため、交流側の方形波出力電圧の実効値はE[V]になります。
よって、正解は(4)です。
(b)
まずは負荷電流ioから考えますが、ここで設問(a)の解説で示した回路図をもう一度以下に示します。
(a)での解説のくり返しになりますが、上図より、S1とS4がオンのときは負荷電流ioが図中の矢印の向きと同じ方向に流れます。一方、S2とS3がオンのときは負荷電流ioが図中の矢印の向きと反対方向に流れます。
よって、図3の(ア)、(イ)、(ウ)のうち、S1とS4がオンのときに負荷電流ioが上昇し、S2とS3がオンのときに負荷電流ioが減少している(ア)が正しい選択肢です。
ちなみに、(ア)は最初少しの間、負荷電流ioが負の値をとっていますが、これはコイルのインダクタンスにより、電流の反応が少し遅れるためで、その間は整流ダイオードを通って電流が図の向きとは逆向きに流れます。
続いて直流電流idについて考えます。直流電流idは青矢印のときでも赤矢印のときでも基本的には図中に記入されている向きと一致しています。
ただし、青矢印から赤矢印に切り替わる瞬間を考えると(つまり図2でいうとt0+T/2のタイミング)、青矢印の電流が流れなくなるばかりか、S2とS3のところにある整流ダイオードを通って電流が逆流するので、結果的に直流電流idは急に負となります。
その後は電流が順当に流れ始めるので、そのうち正に転じることになります。また、赤矢印から青矢印に切り替わる瞬間を考えても(つまり図2でいうとt0+Tのタイミング)、同様の現象が起きるので、直流電流idはT/2の周期で(エ)のような軌跡を描きます。
以上から、(ア)と(エ)が正しいので、正解は(1)です。
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