電験三種 R2年 機械 問3 問題と解説

 問 題     

三相かご形誘導電動機の等価回路定数の測定に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし、等価回路としては一次換算した一相分の簡易等価回路(L形等価回路)を対象とする。

  1. 一次巻線の抵抗測定は静止状態において直流で行う。巻線抵抗値を換算するための基準巻線温度は絶縁材料の耐熱クラスによって定められており、75℃や115℃などの値が用いられる。
  2. 一次巻線の抵抗測定では、電動機の一次巻線の各端子間で測定した抵抗値の平均値から、基準巻線温度における一次巻線の抵抗値を決められた数式を用いて計算する。
  3. 無負荷試験では、電動機の一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して無負荷運転し、一次側において電圧[V]、電流[A]及び電力[W]を測定する。
  4. 拘束試験では、電動機の回転子を回転しないように拘束して、一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して通電し、一次側において電圧[V]、電流[A]及び電力[W]を測定する。
  5. 励磁回路のサセプタンスは無負荷試験により、一次二次の合成漏れリアクタンスと二次抵抗は拘束試験により求められる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

三相かご形誘導電動機の問題は頻出ですが、今回はそのうち「等価回路定数の測定」に関する出題であり、内容的には珍しい部類です。選択肢の文章を読むとかなりマイナーな知識が問われているため、個人的にはこの問題は捨て問題としてしまっても構わないと思います。

一応の解答を示しておくと、(4)の「定格一次電圧を印加」という部分が誤りで、実際には「電流値が定格一次電流となるような電圧を印加」します。この電圧は定格一次電圧に比べてずっと小さい値です。

このことを理解するために、まずは以下に示す三相誘導電動機のL形等価回路を見てください。ちなみに、この問題は捨て問題でいいと書きましたが、ここで示すL形等価回路は重要事項なので、問題文に図が描かれていなくても自分で描けるようにしておくべきです。

少し脱線しますが、誘導電動機の等価回路定数を決めるためには、

  1. 抵抗測定
  2. 無負荷試験
  3. 拘束試験

の3つが必要です。

抵抗測定は文字通り一次巻線抵抗の抵抗値を測定するもので、これにより一次抵抗の値がわかります。内容的には選択肢(1)や(2)に書かれた通りです。

無負荷試験は上図の右側にある負荷を開放して、無負荷状態(すべりs=0)で定格電圧を掛けることで電動機を回転させます。そうすることにより励磁回路だけに電流が流れるので、励磁コンダクタンスや励磁サセプタンスを求めることができます。平たくいえば、無負荷損がわかるということです。

ここでやっと脱線終了で、(4)の拘束試験の話に戻ります。

拘束試験は上図の右側にある負荷を拘束状態(=短絡状態、すべりs=1)とします。この状態で定格電流が流れる程度の低電圧を掛けます。低電圧かつ負荷が短絡しているので励磁回路にはほとんど電流が流れず、電流は全て上図の回路の外側を回ることになります。

これにより、一次二次の合成漏れリアクタンスと二次抵抗の値がわかります(一次抵抗はすでに抵抗試験で求めています)。

以上のように、拘束試験は定格電流が流れる程度の低電圧で行うので、選択肢(4)の「定格一次電圧を印加」が誤りであるといえます。拘束試験は負荷を短絡した状態で行うので、もし定格一次電圧を掛けてしまうと電流が大きくなりすぎて電動機が焼損するおそれがあります。

よって、正解は(4)です。

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