問 題
図に示すように、高調波発生機器と高圧進相コンデンサ設備を設置した高圧需要家が配電線インピーダンスZSを介して6.6kV配電系統から受電しているとする。
コンデンサ設備は直列リアクトルSR及びコンデンサSCで構成されているとし、高調波発生機器からは第5次高調波電流I5が発生するものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、ZS、SR、SCの基本波周波数に対するそれぞれのインピーダンス、、の値は次のとおりとする。
(a) 系統に流出する高調波電流は高調波に対するコンデンサ設備インピーダンスと配電線インピーダンスの値により決まる。
ZS、SR、SCの第5次高調波に対するそれぞれのインピーダンス、、の値[Ω]の組合せとして、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(b) 「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」では需要家から系統に流出する高調波電流の上限値が示されており、6.6kV系統への第5次高調波の流出電流上限値は契約電力1kW当たり3.5mAとなっている。
今、需要家の契約電力が250kWとし、上記ガイドラインに従うものとする。
このとき、高調波発生機器から発生する第5次高調波電流I5の上限値(6.6kV配電系統換算値)の値[A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、高調波発生機器からの高調波は第5次高調波電流のみとし、その他の高調波及び記載以外のインピーダンスは無視するものとする。
なお、上記ガイドラインの実際の適用に当たっては、需要形態による適用緩和措置、高調波発生機器の種類、稼働率などを考慮する必要があるが、ここではこれらは考慮せず流出電流上限値のみを適用するものとする。
- 0.6
- 0.8
- 1.0
- 1.2
- 2.2
解 説
(a)
第5次高調波に対するインピーダンスが問われていますが、第5次高調波の周波数は基本波の周波数を5倍した値です。また、今回はすでに基本波に対するインピーダンスがわかっているため、ここから周波数を変化させたらどうなるかについて考えていきます。
まず、ZS、SR、SCの既知のインピーダンスの値がそれぞれであり、「j」の係数が「正、正、負」となっていることから、ZSとSRは誘導性、SCは容量性であることがわかります(問題文の図からもわかります)。
ここで、誘導性リアクタンスXLと容量性リアクタンスXCを周波数を使った式で表すと、次のようになります。
- XL:誘導性リアクタンス [Ω]
- L:インダクタンス [H]
- ω:角周波数 [rad/s]
- f:周波数 [Hz]
- XC:容量性リアクタンス [Ω]
- C:静電容量 [F]
上式より、誘導性リアクタンスの場合は、周波数が5倍になるとリアクタンスも5倍になることがわかります。また、容量性リアクタンスの場合は、周波数が5倍になるとリアクタンスは1/5倍になります。
ここで、インピーダンスとは抵抗とリアクタンスの合力ことですが、今回は抵抗が存在しないので「インピーダンス=リアクタンス」と考えて大丈夫です。
よって、ZSとSRの第5次高調波に対するインピーダンスは基本波のときの5倍であり、SCの第5次高調波に対するインピーダンスは基本波のときの1/5倍となるので、次のように計算できます。
以上から、正解は(5)です。
(b)
問題で与えられた図を見ると、高調波発生機器から発生する第5次高調波電流I5は途中で分岐して、一方は6.6kV配電系統へ、他方は高圧進相コンデンサ設備へと進んでいます。
つまり、6.6kV配電系統と高圧進相コンデンサ設備は、電流源である高調波発生機器から並列に並んでいると考えることができるので、下図のように描くことができます。
上図において、求めたいのは電流源を流れる電流I5です。
また、6.6kV配電系統を流れる電流を0.875[A]としていますが、これは問題文で「流出電流上限値が契約電力1kW当たり3.5mAで、契約電力が250kW」とあることから、3.5×250=875[mA]=0.875[A]という計算によるものです。
さらに、緑色で示しているのは高圧進相コンデンサ設備にある直列リアクトルとコンデンサの合力です。これらは直列に並んでいるので、単純な和(片方が負なので差ともいえますが)で求めることができます。
以上の条件において、6.6kV配電系統と高圧進相コンデンサ設備は並列に並んでいるのでその電圧は等しく、オームの法則により、次のような等式が成り立ちます。
よって、電流源を流れる電流I5は6.6kV配電系統を流れる電流と高圧進相コンデンサ設備を流れる電流の和になるので、次のように計算できます。
以上より、正解は(4)です。
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