電験三種 R1年 理論 問13 問題と解説

 問 題     

図のように電圧増幅度Av(>0)の増幅回路と帰還率β(0<β≦1)の帰還回路からなる負帰還増幅回路がある。この負帰還増幅回路に関する記述として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、帰還率βは周波数によらず一定であるものとする。

  1. 負帰還増幅回路の帯域幅は、負帰還をかけない増幅回路の帯域幅よりも狭くなる。
  2. 電源電圧の変動に対して負帰還増幅回路の利得は、負帰還をかけない増幅回路よりも不安定である。
  3. 負帰還をかけることによって、増幅回路の内部で発生するひずみや雑音が増加する。
  4. 負帰還をかけない増幅回路の電圧増幅度Avと帰還回路の帰還率βの積が1より十分小さいとき、負帰還増幅回路全体の電圧増幅度は帰還率βの逆数で近似できる。
  5. 負帰還増幅回路全体の利得は、負帰還をかけない増幅回路の利得よりも低下する。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)~(3)に書かれたことは、増幅回路に帰還回路を設けることのメリットに関する事項です。負帰還増幅回路には次のような利点があります。

  1. 周波数の帯域幅を広くとることができる
  2. 電源電圧が変動しても利得が比較的安定である
  3. 増幅回路の内部で発生するひずみや雑音が軽減される

これらはデメリットではなくメリットである点に注意してください。このような特徴を有するので、増幅回路を単独で使うのではなく、わざわざ帰還回路を併用しています。

よって、(1)~(3)はいずれも反対の記述となっているため、これらは全て誤りです。

(4)について、負帰還増幅回路の入力電圧をVin、出力電圧をVoutとすると、回路中のそれぞれの電圧は次のように描くことができます。

上図の①は最初に書き込める条件で、次に帰還回路を出口である②が書けます。最後に、増幅回路の入口は入力電圧が+、帰還回路から出た②が-で入るので、③のようになります。

よって、負帰還増幅回路全体の電圧増幅度Aと、負帰還をかけない増幅回路の電圧増幅度Avとは、それぞれ次の式で表すことができます。

また、選択肢(4)の文章に「負帰還増幅回路全体の電圧増幅度は~」とあるので、A=~の式を作るために、(1)式を(2)式に代入して整理します。

(3)式を見るとわかるように、もしβAvが1よりずっと大きい場合、分母の「1+βAv」はほぼ「βAv」と変わらないと扱うことができるので、

のようになって、Aはβの逆数で近似することができます。

しかし、選択肢(4)の文章を見ると「Avとβの積が1より十分小さいとき」とあり、これではβAvがほぼ0であるといえるので、(3)式は

のようになって、AはAvで近似することができる状態となります。

以上から、選択肢(4)の記述は誤りです。「が1より十分小さいとき」を「が1より十分大きいとき」に直せば、正しい文章となります。

残る選択肢(5)について、電圧利得とは、入力電圧Vin[V]に対する出力電圧Vout[V]の比を以下の式に当てはめた数値です。

しかし今回は、負帰還増幅回路と負帰還をかけない増幅回路との利得の大小関係を比較するだけなので、上式の20やlogを考慮する必要はありません。

単純に( )の内だけ、つまり、負帰還増幅回路全体の電圧増幅度Aと、負帰還をかけない増幅回路の電圧増幅度Avとの大小関係を比較すればよいことになります。

選択肢(4)の解説の(1)式と(2)式で示した通り、AとAvは以下の式で表すことができます。

上の2つの式の違いは分母です。βもVoutも正の数なので、(2)式のほうが分母が小さくなるので、(2)式のAvのほうが(1)式のAよりも大きな値となります。

選択肢(5)の文章を意訳すると「AはAvよりも小さい」ということなので、これは正しい文章だと判断できます。

以上から、正解は(5)となります。

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