前項ではバイポーラトランジスタの3つの接地増幅回路を紹介しましたが、その中でも、電圧増幅率と電流増幅率の両方が大きいエミッタ接地増幅回路が最も主流だと説明しました。
この項では、エミッタ接地増幅回路をより見慣れた形の(トランジスタの記号を使わない)電気回路に変換した等価回路を紹介します。
まず、下図に示すのはエミッタ接地のトランジスタ増幅器の交流信号に注目した回路です。
上図のままでは回路の計算をしづらいので、これを簡易小信号等価回路に変換して考えることが多いです。
ちなみに、簡易小信号等価回路という用語を覚える必要はないと思います。また、上図を自力で下図に描き換えるというのも、電験三種の試験対策としては不要だと思います。問題文ですでに下図のような回路図が与えられることが多いので、これを元に計算を進められれば問題ありません。
- Vin:入力信号電圧[V]
- Vout:出力信号電圧[V]
- IB:入力信号電流(ベース電流)[A]
- IC:出力信号電流(コレクタ電流)[A]
- hie:トランジスタの入力インピーダンス[Ω]
- hfe:小信号電流増幅率(単位なし)
上図の2つのうち、上側のものを下側のものに変換することによって、1つの大きな回路を2つの小さな回路に分けて考えることができます。
簡易小信号等価回路を見てわかるように、左側は、Vin[V]、IB[A]、hie[Ω]の3つで単純な回路ができあがっています。一方、右側も、Vout[V]、IC[A]、R[Ω]の3つで単純な回路となるので、それぞれの回路で計算が簡単になります。
ちなみに、回路図において「◯に横線」は電流源の記号です。電流源を流れる電流はhfeIB[A]で表されます。また、hfeは小信号電流増幅率のことですが、これは入力電流に対する出力電流の比で表されます。
よって、上式を使えば右の回路を流れる電流をIC[A]ではなくhfeIB[A]とも表すことができるので、左右の回路の両方でIBというパラメータを使うことになり、計算する際に2つの回路をつなげることができます。
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