同期機の電機子反作用

直流機の電機子反作用のページにて直流機の電機子反作用について紹介しました。同期機(同期発電機・同期電動機)についても同じように電機子反作用が生じますが、直流機の場合と異なる面もあります。

この項では、同期機ならではの特徴について解説するので、電機子反作用の基本的な内容については知りたい場合は、あらかじめ直流機の電機子反作用のページをご確認の上、以下の解説をお読みください。


三相同期機の電機子巻線に電流が流れると、この電流によって電機子反作用が生じます。この電機子反作用の大きさは、直流機のときは電流の大きさによって決まりました。一方、同期機でも電流の大きさが電機子反作用に及ぼす影響は一緒ですが、さらに、力率の影響も受けます

代表的な例として、力率1のとき、遅れ力率0のとき、進み力率0のときの電機子反作用について説明します。

交差磁化作用

三相同期発電機に力率1の電機子電流が流れている場合の電機子反作用を表す図を以下に示します。

図中の◯の中に×があるマークは、電流の方向が画面手前側から奥側へ向かっていることを表しています。◯の中に●があるマークは、反対に、電流の方向が画面奥側から手前側へ向かっていることを表しています。赤色の矢印は電機子電流による回転磁束の向きを表し、青色の矢印は界磁電流による磁束の向きを表しています。

上図の場合、磁極Nの左側を見ると、界磁電流による磁束の向き(青矢印、画面上向き)と電機子電流による磁束の向き(赤矢印、画面上向き)が一緒なので、電機子反作用により磁束が増加することになります。しかし、磁極Nの右側を見ると、2つの磁束(2つの矢印)の向きが反対なので、磁束が減少することになります。

同様に考えると、磁極Sの左側は磁束が増加し、磁極Sの右側は磁束が減少します。このように、各磁極の片側では電機子電流による磁束が界磁電流による磁束を増加させ、反対側では減少させるような電機子反作用を、特に交差磁化作用といいます。

減磁作用

続いて、三相同期発電機に遅れ力率0の電機子電流が流れている場合の電機子反作用を表す図を以下に示します。

上図の場合、先ほどと同じように考えたときに、磁極Sの右側でも左側でも、磁極Nの右側でも左側でも、どこを取っても界磁電流による磁束の向き(青矢印)と電機子電流による磁束の向き(赤矢印)が反対向きになります。

よって、遅れ力率0の電機子電流による磁束は、常に界磁電流による磁束を減少させます。このような電機子反作用を、減磁作用といいます。

増磁作用

最後に、三相同期発電機に進み力率0の電機子電流が流れている場合の電機子反作用を表す図を以下に示します。

上図の場合は、遅れ力率0のときとは全く反対で、いずれの場合も2つの磁束の向き(赤と青の矢印)が一致します。つまり、進み力率0の電機子電流による磁束は、常に界磁電流による磁束を増加させ、これを増磁作用といいます。

同期発電機と同期電動機の違い

以上のことは三相同期発電機を例に説明しましたが、三相同期電動機の場合はこれが反対になります。

つまり、遅れ力率0のときに増磁作用を示し、進み力率0のときに減磁作用を示します。力率1の場合でも発電機と電動機は反対の動きをしますが、これは結局は交差磁化作用であることに変わりありません。

まとめ

この項をまとめると、次の表の通りとなります。

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