電験三種 H30年 機械 問18 問題と解説

 問 題     

一般的な水力発電所の概略構成を図1に、発電機始動から遮断器投入までの順序だけを考慮したシーケンスを図2に示す。図2において、SWは始動スイッチ、GOVはガバナ動作、AVRは自動電圧調整器動作、CBCは遮断器投入指令である。

GOVがオンの状態では、ガイドベーンの操作によって水車の回転速度が所定の時間内に所定の値に自動的に調整される。AVRがオンの状態では、励磁装置の動作によって発電機の出力電圧が所定の時間内に所定の値に自動的に調整される。

水車の回転速度及び発電機の出力電圧が所定の値になると、自動的に外部との同期がとれるものとする。

この始動シーケンスについて、次の(a)及び(b)の問に答えよ。なお、シーケンス記号はJIS C 0617-7(電気用図記号-第7部:開閉装置、制御装置及び保護装置)に従っている。

(a) 図2の(ア)~(ウ)に示したシンボルの器具名称の組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

     (ア)         (イ)         (ウ)

  1. 押しボタンスイッチ 自動復帰接点     手動復帰接点
  2. ひねり操作スイッチ 瞬時動作限時復帰接点 限時動作瞬時復帰接点
  3. 押しボタンスイッチ 瞬時動作限時復帰接点 限時動作瞬時復帰接点
  4. ひねり操作スイッチ 自動復帰接点     手動復掃接点
  5. 押しボタンスイッチ 限時動作瞬時復帰接点 瞬時動作限時復帰接点

(b) 始動スイッチをオンさせてから遮断器の投入指令までの時間の値[秒]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。なお、リレーの動作遅れはないものとする。

  1. 5
  2. 10
  3. 20
  4. 30
  5. 35

 

 

 

 

 

正解 (a)-(3), (b)-(4)

 解 説    

この問18は難易度が高いというわけではないのですが、出題頻度の観点から見てややマニアックな出題だといえます。一方で問17はB問題にしてはかなり基礎的な内容だったので、問17と問18の選択問題では、問17を選んだ受験者が多かったのではないかと思われます。

この年に限らず、選択問題である問17と問18の難易度は必ずしも同レベルではありません。個人の得意分野・不得意分野を考慮することももちろん大事ですが、出題テーマだけではなく、どこまで深く掘り下げた問題なのかも確認してから、解く問題を選んでください。

(a)

(ア)の図記号は「押しボタンスイッチ」です。ボタンには押すタイプ、引くタイプ、ひねるタイプがありますが、それぞれ以下のような図記号で表すことができます。

(イ)には「瞬時動作限時復帰接点」が、(ウ)には「限時動作瞬時復帰接点」が入りますが、これは名称と図記号だけではなく、その意味についても理解しておく必要があります(これを知らないと、(b)が解けません)。

瞬時動作限時復帰接点は「瞬時動作/限時復帰/接点」と切って意味を考えるとわかりやすいです。この接点をつなぐためのオン指令がきた場合には、瞬時に動作(オン)します。反対に接点を切り離すためのオフ指令がきた際には、一定の時間を置いてから復帰(オフ)します。

限時動作瞬時復帰接点はその反対です。接点をつなぐためのオン指令がきてもすぐにはオンせず、一定の時間を待ってから動作(オン)します。そして、接点を切り離すためのオフ指令がきた際には瞬時に復帰(オフ)します。

以上から、正解は(3)となります。

(b)

下図をもとに説明をしていきます。青字や赤字の数字は、始動スイッチをオンしてから経過した秒数を表しています。緑色の数字は解説の際に使うための記号です。

まず左上の始動スイッチをオンしたときが基準になるので、これは0秒です。スイッチオンに伴って①で示したRがオンになるので、各所にある3つのRが瞬時にオンされます。

すると、②で示すRがつながったことにより、③のTLR1がオンされます。この間、特にタイムラグがないので、まだ経過時間は0秒のままです。

さらに、④のTLR1も0秒の時点でオンとなります。というのも、(a)で解説したように、(イ)は瞬時動作限時復帰接点だからです。復帰するときはラグ(ここでは5秒)が生じますが、動作するときは瞬時にオンできます。

よって、TLR1が0秒でオンすれば、それに伴ってGOVも0秒でオンすることがわかります。また、⑤のところで、この上にあるRとGOVがつながることによって、⑤のTLR2も0秒でオンします。

ここから注意が必要です。⑤のTLR2は0秒でオンしましたが、(ウ)が限時動作瞬時復帰接点であるために、動作するまでに20秒間待つことになります。よって、⑥のTLR2がオンするのは、20秒ということになります。

あとは同じような展開ですが、⑥のTLR2の下にあるAVRも20秒のままオンします。それに伴ってGOVとAVRがつながったことにより、⑦のTLR3がオンするのも20秒の時点です。

そして、⑧のTLR3では再び限時動作瞬時復帰接点があり、今度はラグが10秒間なので、この時点の経過時間は合計で30秒となります。

よって、シーケンスの最後にCBC(遮断器投入指令)がオンとなるのは、始動スイッチオンから30秒後となります。

以上から、正解は(4)です。

コメント

  1. ビンゴ より:

    旧記号、新記号になる前にシーケンス回路を設計していたものですが、問題に理不尽なところがあるような気がします。
    Rが動作したとき、TLR1が動作し(コイルが瞬時に励磁)、5秒後に動作する接点なのになぜ”瞬時動作限時復帰接点”なのか?・・瞬時動作限時動作接点ではないのか?(なぜなら5秒後にタイマーが動作するのでGOVがOFFする)
    瞬時動作限時復帰接点ではシーケンスが途切れてしまうのではないのか?
    途切れ場合GOVを自己保持してAVRでリセットしなければならないのでは。

  2. 林次郎 より:

    私もそう思います。大昔少しかじった75歳です。