問 題
図1に示す降圧チョッパの回路は、電圧Eの直流電源、スイッチングする半導体バルブデバイスS、ダイオードD、リアクトルL、及び抵抗Rの負荷から構成されている。また、図2には、図1の回路に示すダイオードDの電圧vDと負荷の電流iRの波形を示す。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 降圧チョッパの回路動作に関し、図3~図5に、実線で示した回路に流れる電流のループと方向を示した三つの電流経路を考える。図2の時刻t1及び時刻t2において、それぞれどの電流経路となるか。正しい組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
時刻t1 時刻t2
- 電流経路(A) 電流経路(B)
- 電流経路(A) 電流経路(C)
- 電流経路(B) 電流経路(A)
- 電流経路(B) 電流経路(C)
- 電流経路(C) 電流経路(B)
(b) 電圧Eが100V、降圧チョッパの通流率が50%、負荷抵抗Rが2Ωとする。デバイスSは周期Tの高周波でスイッチングし、リアクトルLの平滑作用により、図2に示す電流iRのリプル成分は十分小さいとする。電流iRの平均値iR[A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 17.7
- 25.0
- 35.4
- 50.1
- 70.7
解 説
(a)
最初に選択肢にある電流経路(A)、(B)、(C)を見ると、(C)の経路は明らかにおかしいことがわかります。というのも、これは直流電源・スイッチ・ダイオードから構成された回路ですが、直流電源を流れる電流が本来の向きと反対向きになっています。
よって、この問題は時刻t1と時刻t2が、電気経路(A)と(B)のどちらと対応するか…という問題になります。
そのため、これから電気経路(A)と(B)を見比べていきますが、先に注意しておきたいのは、ダイオードというのは電流の向きを整える役割を持った素子であるという点です。つまり、ここに電流が流れているとしても、ダイオードの前後で電圧に変化はありません(端子電圧=0[V])。
まず、電流経路(A)を見ます。
上図に書き込んだように、これはスイッチが閉じているときの図です。スイッチが閉じているときにはただの電線として振る舞うので、左側の電源の端子電圧Eと、中央部の電圧vDは違いがありません。よって、vD=E[V]となります。
つまり、図2でvD=E[V]となっている時刻t1のほうが、電流経路(A)に対応しているということがわかります。
また、このときは電源から電流が供給されるので、図3でも点線になっている通り、ダイオードに電流は流れません。
この時刻t1の時間帯は、回路右側のリアクトルLが電源から供給されるエネルギーを蓄える段階となります。
続いて、電流経路(B)を見ます。
今度はスイッチが開いているときの図です。これだと電源が回路から切り離されるので、時刻t1の時間帯でリアクトルLに蓄えられたエネルギーを放出します。
そして、電流経路(B)をぐるぐる回っている間に抵抗Rでエネルギーが消費され続けるので、図2の時刻t2の時間帯では時間経過とともにiRが減少していくことがわかります。
また、このときはダイオードに電流が流れますが、ダイオードは整流の役割を果たすだけで電圧変化には寄与しないため、ダイオードの端子間電圧vD=0[V]となります。
以上から、時刻t1は電流経路(A)に、時刻t2は電流経路(B)に対応するため、正解は(1)です。
(b)
E=100[V]、R=2[Ω]より、電流I[A]の上限はオームの法則から以下のようになります。
しかし、今回は降圧チョッパなので、この能力を最大限に使うわけではありません。通流率が50[%]ということなので、電流iRの平均値iR[A]も最大値Iの50[%]になります。
よって、正解は(2)です。
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