電験三種 H30年 電力 問10 問題と解説

 問 題     

送配電系統における過電圧の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 鉄塔又は架空地線が直撃雷を受けたとき、鉄塔の電位が上昇し、逆フラッシオーバが起きることがある。
  2. 直撃でなくても電線路の近くに落雷すれば、電磁誘導や静電誘導で雷サージが発生することがある。これを誘導雷と呼ぶ。
  3. フェランチ効果によって生じる過電圧は、受電端が開放又は軽負荷のとき、進み電流が線路に流れることによって起こる。この現象は、送電線のこう長が長いほど著しくなる。
  4. 開閉過電圧は、遮断器や断路器などの開閉操作によって生じる過電圧である。
  5. 送電線の1線地絡時、健全相に現れる過電圧の大きさは、地絡場所や系統の中性点接地方式に依存する。直接接地方式の場合、非接地方式と比較すると健全相の電圧上昇倍率が低く、地絡電流を小さくすることができる。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

結論から書くと、(5)の「地絡電流を小さくすることができる」という部分が誤りで、実際には地絡電流はかなり高くなります。以下、そのことについて詳しく解説します。


直接接地方式を模式図で表すと、次のように描くことができます。

この条件で地絡事故が起こると、地絡電流Iが上図の赤点線で示したような経路を流れます。この際、抵抗がないため(厳密には線路抵抗がありますが、とても小さい値です)、I=E/R[A]のRがほぼ0であり、地絡電流Iはかなり大きくなります。

ちなみに、地絡電流が大きいということは付近で通信障害(電磁誘導障害)が起こるなどのデメリットがある一方、地絡電流が大きいとそれだけ保護継電器による事故の検出は早く、回線の選択遮断が確実にできるというメリットもあります。

また、中性点の電圧は0なので、健全相の電圧は事故の影響をほとんど受けません。


一方、非接地方式を模式図で表すと、次のように描くことができます。

上図上側のように地絡事故が起こった場合、その等価回路は上図左下側のように描くことができ、さらには上図右下側のようにまとめることができます。

この等価回路にオームの法則を適用すると、地絡電流Iは以下の式で表すことができます。

  • I:地絡電流 [A]
  • ω:角周波数 [rad/s]
  • C:対地静電容量 [F]
  • E:地絡箇所における地絡前時点での対地電圧 [V]
  • V:線間電圧 [V]

ここで、C[F]は電線1相あたりの対地静電容量ですが、この値は普通小さいです。よって、非接地方式は地絡電流が小さいということになります。このため、電磁誘導障害の面では心配ありませんが、保護継電器での検出は難しく、回線の選択遮断には向きません。

また、地絡した相の対地電圧が0になるので、健全相の対地電圧が線間電圧の大きさ(正常時の√3倍)まで上がります。


以上から、解説の冒頭で書いた通り、(5)の「地絡電流を小さくすることができる」が誤りで、地絡電流は大きくなるので、正解は(5)となります。

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