電験三種 H29年 機械 問11 問題と解説

 問 題     

図1は、平滑コンデンサをもつ単相ダイオードブリッジ整流器の基本回路である。なお、この回路のままでは電流波形に高調波が多く含まれるので、実用化に当たっては注意が必要である。

図1の基本回路において、一定の角周波数ωの交流電源電圧をvs、電源電流をi1、図中のダイオードの電流をi2、i3、i4、i5とする。平滑コンデンサの静電容量は、負荷抵抗の値とで決まる時定数が電源の1周期に対して十分に大きくなるように選ばれている。

図2は交流電源電圧vsに対する各部の電流波形の候補を示している。

図1の電流i1、i2、i3、i4、i5の波形として正しい組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    i1      i2      i3      i4      i5

  1. 電流波形1 電流波形4 電流波形3 電流波形3 電流波形4
  2. 電流波形2 電流波形3 電流波形4 電流波形4 電流波形3
  3. 電流波形1 電流波形4 電流波形3 電流波形4 電流波形3
  4. 電流波形2 電流波形4 電流波形3 電流波形3 電流波形4
  5. 電流波形1 電流波形3 電流波形4 電流波形4 電流波形3

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

まず、i1は交流電源を流れる電流なので、その向きは正にも負にも振れるため、波形1または波形2になります。

一方、i2、i3、i4、i5はダイオードを通る電流なので、図の矢印の方向に一行通行にしか電流が流れないため、正のときにしか流れない波形3または波形4になります。

…とはいえ、選択肢はいずれも上記の条件になっているため、この時点では特に選択肢を絞れませんので、もっと詳しく考えていきます。

i1は交流電源を流れる電流なので、その位相は電源電圧vsと概ね一致します。よって、vsが正のときにi1も正になっている波形1が該当します。

続いて、vsが正のとき(0~π)とvsが負のとき(π~2π)に回路を流れる電流の軌跡を次に示します。

vsが正のとき(0~π)は、青矢印の軌跡をたどります。

考え方としては、まずvsを正方向(下から上)でスタートして、i2のダイオードを通って負荷抵抗を通過します。続いて電源側に戻るのですが、i4を通ったら電源に戻れない(●で示された結線がないと曲がれない)ので、ここはi5を通るルートが正解です。

これで電源に戻れば、青矢印が一周したことになります。よって、vsが正のとき(0~π)はi2とi5に電流が流れるので、これらは波形3が適切です。

一方、vsが負のとき(π~2π)は、赤矢印の軌跡をたどります。

考え方は先程の反対で、まずvsを負方向(上から下)でスタートして、●(結線)のあるところで曲がってi3のダイオードを通って負荷抵抗側へと進みます。ダイオードは必ず矢印の向き(下から上)の一方通行である点に注意してください。

続いて電源側に戻りますが、電源を上から下へと通過したいので、i4を通って回り込むかたちで電源へと戻ります。よって、vsが負のとき(π~2π)はi3とi4に電流が流れるので、これらは波形4が適切です。

以上から、(5)が正解となります。

ちなみに、波形1~4のいずれもvsと完全に連動せず、電流が0である(流れない)部分が結構ありますが、これは平滑コンデンサが存在するためです。

というのも、充電されたコンデンサの端子電圧が電源電圧vsよりも大きい場合には、負荷抵抗には電源からではなく、コンデンサからの電流が流れるためです。

電源電圧vsの値がコンデンサの端子電圧よりも大きくなったときには、電源側からの電流が負荷に流れて上図の赤矢印や青矢印の軌跡で電流が流れるので、図2に示されるような波形となっています。

ただし、選択問題である以上、ここまで気にしなくても上記の解説のように考えれば充分に正解できる問題となっています。

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