電験三種 H29年 電力 問3 問題と解説

 問 題     

火力発電所の環境対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 接触還元法は、排ガス中にアンモニアを注入し、触媒上で窒素酸化物を窒素と水に分解する。
  2. 湿式石灰石(石灰)-石こう法は、石灰と水との混合液で排ガス中の硫黄酸化物を吸収・除去し、副生品として石こうを回収する。
  3. 二段燃焼法は、燃焼用空気を二段階に分けて供給し、燃料過剰で一次燃焼させ、二次燃焼域で不足分の空気を供給し燃焼させ、窒素酸化物の生成を抑制する。
  4. 電気集じん器は、電極に高電圧をかけ、コロナ放電で放電電極から放出される負イオンによってガス中の粒子を帯電させ、分離・除去する。
  5. 排ガス混合(再循環)法は、燃焼用空気に排ガスの一部を再循環、混合して燃焼温度を上げ、窒素酸化物の生成を抑制する。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)は正しい記述で、窒素酸化物(NO)にアンモニア(NH3)を注入すると、以下の化学反応式の通り、無害な窒素(N2)と水(H2O)に分解できます(化学反応式を覚えておく必要はないと思います、参考程度に受けとってください)。

(2)も正しい記述で、硫黄酸化物(SO2)の除去には、石灰(CaCO3)と水(H2O)とを使います。(1)同様、化学反応式をあくまで参考として載せておきます。重要事項ではありません。

上記の反応式より、二酸化炭素(CO2)と亜硫酸カルシウム(CaSO3・1/2H2O)が生成しますが、この亜硫酸カルシウムは空気中の酸素で酸化され、石こう(CaSO3・2H2O)に変わります。

(3)と(5)に関して、窒素酸化物(NOX、ノックスと読みます)には、フューエルNOXとサーマルNOXの2種類があります。

フューエル(fuel)は燃料という意味があり、燃料中に含まれる窒素分が由来となって生じるのがフューエルNOXです。

一方、サーマル(thermal)は熱という意味で、高温条件下では空気中の窒素(N2)が酸素(O2)と反応して窒素酸化物へとなり、これをサーマルNOXと呼んでいます。

(3)と(5)はいずれも窒素酸化物の生成を抑制するのに有効な方法ですが、これらは燃料を変えているわけではないので、フューエルNOXは関係ありません。つまり、サーマルNOXを減らす方法ということになります。

サーマルNOXができる条件は、「高温」と「空気(窒素+酸素)」です。よって、これを低減したければ「温度を下げること」と「空気を減らすこと」がポイントになります。

(3)は一段階目で明らかに足りない空気量で燃料を燃やし、足りない分の空気を二段階目で吹き込んでいるので余分な空気を減らすことができます。また、空気が少ないということは酸素が少ないことと同じであり、酸素が少なければ燃焼温度が下がるので、その面からもこの方法は窒素酸化物の低減に有効です。よって、(3)は正しい記述です。

(5)は排ガスの一部を再循環させていますが、これは燃焼によって酸素を消費したあとのガスなので、酸素濃度が低いです。よって、酸素量が減るために燃焼温度は下がるので、窒素酸化物の低減につながります。しかし、(5)の文章では「燃焼温度を上げ」と書いてあるので、この部分が誤りで、正しくは「燃焼温度を下げ」となります。

(4)は記述の通りで、電気集じん器によってガス中の粒子を電気的に除去しています。

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