問 題
次の文章は、小形モータに関する記述である。
小形直流モータを分解すると、N極とS極用の2個の永久磁石、回転子の溝に収められた3個のコイル、3個の( ア )で構成されていた。
一般に( イ )の溝数を減らすと、エアギャップ磁束が脈動し、トルクの脈動が増える。そこで、希土類系永久磁石には大きな( ウ )があるので、溝をなくしてエアギャップにコイルを設け、トルク脈動の低減を目指した小形モータも作られている。
小形( エ )には、永久磁石を回転子の表面に設けたSPMSMという機種、永久磁石を回転子に埋め込んだIPMSMという機種、突極性を大きくした鉄心だけのSynRMという機種などがある。小形直流モータは電池だけで運転されるものが多いが、小形( エ )は、円滑な( オ )が困難なため、インバータによって運転される。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
- 整流子片 電機子 保磁力 同期モータ 始動
- 整流子片 界磁 透磁率 誘導モータ 制動
- ブラシ 電機子 透磁率 同期モータ 制動
- 整流子片 電機子 保磁力 誘導モータ 始動
- ブラシ 界磁 透磁率 同期モータ 始動
解 説
小型モータを図示すると、以下の図のようになります。
これを見てもわかるように、磁石はN極とS極の2つ、コイルは3つ、中心にある丸いのが整流子で、整流子は3つの整流子片から構成されます。整流子が回転することによって、電流の向きが変化します。よって、( ア )には「整流子片」が入ります。
選択肢にある「ブラシ」も整流子と同じく、電流の向きを切り替えるためのものです。しかし、整流子がくるくる回転するのに対し、ブラシは上図で水色の長方形2つで示している通り、電源とつながっているので固定されています。
また、上図の通り、両端に固定されているのが界磁で、真ん中でくるくる廻っているのが電機子なので、電機子の溝数を減らすことでエアギャップ磁束が脈動し、トルクの脈動が増えます。よって、( イ )には「電機子」を入れるのが適切です。
( ウ )は永久磁石の性質が問われているので、「保磁力」が入ります。漢字からもわかると思いますが、「保磁力」と「透磁率」は反対の性質を持った言葉で、永久磁石として必要なのは保磁力で、磁束を通る目的で用いる場合には透磁率の高い素材を用いる必要があります。
( エ )について、SPMSMは表面磁石型同期型モータ(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)、IPMSMは埋込磁石型同期型モータ(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)…などと、正確に日本語訳や英語表記を覚える必要はないと思います。
しかし、SPMSMやIPMSMの「SM」が「Synchronous Motor」であることだけ覚えておけば、これらは同期モータ(同期電動機)だと判断することができます。ちなみに、SynRMの場合、最初のSynと最後のMで、やはり「Synchronous Motor」を表しています。よって、( エ )には「同期モータ」が入ります。
上記の小型同期モータは、電機子を同期速度付近まで回転させる始動が難しいです。そのため、インバータを用いることで始動を行います。よって、( オ )には「始動」が入ります。
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