問 題
次の文章は、電動機の速度制御に関する記述である。
他励直流電動機の速度制御には、界磁回路の直流電流を調整する方法のほかに、電機子回路の( ア )を調整する方法がある。これは、磁束一定の条件で、誘導起電力が( イ )に比例している特性を利用したものである。この方法によると、速度が一定となる定常状態において、負荷トルクの変動によって電機子抵抗による電圧降下分だけの速度変動を生じる。
誘導電動機の速度制御には、電源が商用電源である場合は滑りを広く利用する方法がある。その方法は( ウ )や、巻線形誘導電動機の二次抵抗による比例推移を利用する制御である。
しかし、滑りを利用する方法は、速度が定格速度に比べて低くなるほど二次効率が( エ )する。これを改善する巻線形誘導電動機の二次励磁という制御は、二次回路に電力変換器を接続して二次抵抗損に相当する電力を交流電源( オ )する方法である。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
- 直流電圧 速度 一次電圧制御 低下 に返還
- 直流電流 速度 極数変換 増加 から供給
- 直流電圧 電機子電流 極数変換 低下 に返還
- 直流電圧 電機子電流 一次電圧制御 増加 に返還
- 直流電流 電機子電流 一次電圧制御 低下 から供給
解 説
( ア )について、直流電動機の回転速度を変えたいのであれば、以下の変数のいずれかを変える方法が主流です。
- 端子電圧V[V]
- 電機子巻線の抵抗Ra[Ω]
- 磁束Φ[Wb]
これと選択肢を見比べると、(端子電圧)=(電機子回路の直流電圧)なので、( ア )には「直流電圧」が適切です。
( イ )は直前に「誘導起電力」とあるので、以下の誘電起電力の式がポイントになります。
- E:逆起電力[V]
- p:磁極数
- Z:電機子総導体数
- a:巻線の並列回路数
- Φ:1極あたりの磁束[Wb]
- n:電機子の回転速度[min-1]
ここで、pやZ、aは電動機自体を変えない限りは定数で、また、問題文より今回はΦも定数です。よって、変数は左辺のEと右辺のnだけなので、Eはnに比例し、つまり( イ )は「速度」となります。
( ウ )からは誘導電動機の話に変わっていますが、誘導電動機の回転速度の式は公式として覚えておきたいです。
- N:回転速度(回転子の速度)[min-1]
- s:滑り(単位なし)
- Ns:同期速度[min-1]
- p:磁極の数[極]
- f:周波数[Hz]
これを見ると、p、s、fのどれを変えても回転速度が変わることがわかりますが、今回は問題文で「滑りを利用する」と指定されているので、変数はsとなります。この時点で、選択肢の「極数変換」はpを変えることとなり不適なので、理由はともかく「一次電圧制御」が正解であると判断することもできます。
話を戻すと、滑りsを変化させる制御について、これは以下の3つのやり方があります。
- 一次電圧による制御
- 二次抵抗による制御
- 二次励磁による制御
一次電圧による制御では、一次電圧を変化させることにより電動機トルク特性曲線と負荷トルク特性曲線との交点を移動させ、滑りを変化させます。今回は( ウ )に続く文章(比例推移)がこれに対応するので、( ウ )には「一次電圧制御」が入ります。
二次抵抗による制御では、二次側端子に抵抗を接続し、この抵抗値を加減することで滑りを変化させます。
二次励磁による制御では、二次回路に可変周波の可変電圧を外部から加え、これを変化させることで滑りを変化させます。
( エ )は、「~効率が( エ )する。これを改善する~」という文脈から考えると、明らかにネガティブな言葉が入ります。よって、これは「低下」とするのが適当です。
ちなみに、以下の二次抵抗損(二次銅損)の式から考えても、sが大きくなると損失が大きくなることがわかるので、ひいては効率が低下することがわかります。
- Pc2:二次抵抗損(二次銅損)[W]
- s:滑り
- P2:二次入力[W]
( オ )を含む文章は、( ウ )の解説で触れた「二次励磁」のことを指しています。これは、二次抵抗損(二次銅損)に相当する電力を外部から電源に加えることで、損失分を打ち消す方法です。「外部から電源へ」の向きの移動なので、「交流電源」に続く( オ )には「に返還」を入れるのが適切です。
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