問 題
間口10[m]、奥行き40[m]のオフィスがある。夏季の節電のため、天井の照明を間引き点灯することにした。また、間引くことによる冷房電力の削減効果も併せて見積もりたい。節電電力(節電による消費電力の減少分)について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) このオフィスの天井照明を間引く前の作業面平均照度は1000[lx](設計照度)である。間引いた後は750[lx](設計照度)としたい。天井に設置してある照明器具は2灯用蛍光灯器具(蛍光ランプ2本と安定器)で、消費電力は70[W]である。また、蛍光ランプ1本当たりのランプ光束は3520[lm]である。
照明率0.65、保守率0.7としたとき、天井照明の間引きによって期待される節電電力[W]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 420
- 980
- 1540
- 2170
- 4340
(b) この照明の節電によって照明器具から発生する熱が減るためオフィスの空調機の熱負荷(冷房負荷)も減る。このため、冷房電力の減少が期待される。空調機の成績係数(COP)を3とすると、照明の節電によって減る空調機の消費電力は照明の節電電力の何倍か。最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 0.3
- 0.33
- 0.63
- 1.3
- 1.33
解 説
(a)
照度E[lx]は明るさを表すパラメータで、その基本式は光束F[lm]を面の面積A[m2]で割った式になります。
しかし、実際には部屋に照明器具が複数あるのが普通なので、その個数Nを考慮する必要がありますし、また、問題文にもある照明率Uと保守率Mについても考えなければいけません。
照明の光の一部は壁や床などに吸収されたり、窓の外へ抜けていったりして、作業面を照らすという役割を持ちません。照明率Uというのは、全ての光束のうち、作業面を照らすのに役立っている光束の割合を意味します。
また、照明は新品の状態では充分に明るさが確保できるものですが、時間が経って古くなってくると照明器具の劣化や汚れなどにより、充分な明るさが確保できない場合があります。そのため、このような理由で不足してしまう明るさを初めから考慮に入れておくのが保守率Mの考え方です。
よって、最初の式にこれらの条件を付け加えると、以下の式のようになります。
- E:照度[lx]
- F:光束[lm]
- N:照明の数
- U:照明率
- M:保守率
- A:面積[m2]
よって、上式に問題文で与えられた数値を代入すると、間引き前は
となり、間引き後は、
と計算できます。
よって、間引きにより照明が125-94=31個分減っているので、節電電力は
70[W]×31=2170[W]
となります。
(b)
まずCOPの重要公式を覚えておく必要があります。
熱交換器で吸収した熱量をQ[J]、ヒートポンプの消費電力量をW[J]としたとき、熱損失などを無視すると、ヒートポンプの成績係数(COP)は、冷房時は、暖房時はで与えられます。今回は冷房時なので、を使います。
ここで、この問題においてはQ[J]が節電前後での照明器具から発生する熱の減少分(冷やさなくて良くなった分)、W[J]が、それを冷やすために必要なヒートポンプの消費電力量ということになるので、求める答えは、
となります。
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