「絶縁耐力」とは、電路と大地との間に試験電圧(最大使用電圧よりも高い電圧)をかけても「絶縁性能」が保障されるという耐久性のことです。
絶縁耐力試験によって絶縁耐力の有無を確認しますが、その際、試験電圧を連続して10分間加えることが普通です。試験電圧というのは多くの場合、最大使用電圧よりも高い電圧なのですが、どのくらい強いかは電路の種類や最大使用電圧によって変わってきます。
ちなみに、最大使用電圧とは、使用電圧が1000V以下だと使用電圧の1.15倍となります。使用電圧が1000V超では使用電圧に1.15を掛けて1.1を割った値となります(50万V以上や100万V以上の場合はさらに係数が変わってきますが、電験三種の範ちゅうではありません)。
- (使用電圧)≦1000[V]:(最大使用電圧)=(使用電圧)×1.15
- (使用電圧)>1000[V]:(最大使用電圧)=(使用電圧)×1.15÷1.1
高圧及び特別高圧の電路
高圧及び特別高圧の電路での耐圧試験は、電路の種類によって、以下のような試験電圧によって行います。上述の通り、試験電圧を連続して10分間加えて問題がなければ、その電路を使用することができます。
電路の種類 |
試験電圧 |
最大使用電圧が7,000V以下の電路 |
最大使用電圧の1.5倍の電圧 |
最大使用電圧が7,000Vを超え、15,000V以下の中性点接地式電路(中性線を有するものであって、その中性線に多重接地するものに限る。) |
最大使用電圧の0.92倍の電圧 |
最大使用電圧が7,000Vを超え、60,000V以下の電路(上段に掲げるものを除く。) |
最大使用電圧の1.25倍の電圧(10,500V未満となる場合は10,500V) |
また、電線にケーブルを使用する交流の電路においては、上記のような交流電圧による試験ではなく、直流電圧で試験してもよいことになっています。直流電圧での試験方法は、上表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を連続して10分間加えるというものです。
機械器具等の電路の絶縁耐力
機械器具等の電路での耐圧試験は、以下のような条件で行います。「機械器具等」というのは、開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、誘導電圧調整器、計器用変成器、変電所などに施設する機械器具の接続線や母線のことを指します。
種類 |
試験電圧 |
最大使用電圧が7,000V以下の器具等 |
最大使用電圧の1.5倍の電圧(直流の充電部分については最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は1倍の交流電圧)(500V未満となる場合は、500V) |
最大使用電圧が7,000Vを超え15,000V以下の器具等であって、中性点接地式電路(中性線を有するものであって、その中性線に多重接地するものに限る。)に接続するもの |
最大使用電圧の0.92倍の電圧 |
最大使用電圧が7,000Vを超え60,000V以下の器具等(上段に掲げるものを除く。) |
最大使用電圧の1.25倍の電圧(10,500V未満となる場合は、10,500V) |
回転機及び整流器の絶縁耐力
回転機及び整流器での耐圧試験は、以下のような条件で行います。
種類 |
試験電圧 |
試験方法 |
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回転機 |
発電機、電動機、調相機その他の回転機(回転変流機を除く。) |
最大使用電圧が7,000V以下のもの |
最大使用電圧の1.5倍の電圧(500V未満となる場合は、500V) |
巻線と大地との間に連続して10分間加える。 |
最大使用電圧が7,000Vを超えるもの |
最大使用電圧の1.25倍の電圧(10,500V未満となる場合は、10,500V) |
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回転変流機 |
直流側の最大使用電圧の1倍の交流電圧(500V未満となる場合は、500V) |
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整流器 |
最大使用電圧が60,000V以下のもの |
直流側の最大使用電圧の1倍の交流電圧(500V未満となる場合は、500V) |
充電部分と外箱との間に連続して10分間加える。 |
変圧器の電路の絶縁耐力
変圧器の電路での耐圧試験は、以下のような試験電圧によって行います。試験方法は、試験される巻線と他の巻線、鉄心もしくは外箱との間に試験電圧を連続して10分間加えます。
巻線の種類 |
試験電圧 |
最大使用電圧が7,000V以下の巻線 |
最大使用電圧の1.5倍の電圧(500V未満となる場合は、500V) |
最大使用電圧が7,000Vを超え15,000V以下の巻線であって、中性点接地式電路(中性線を有するものであって、その中性線に多重接地するものに限る。)に接続するもの |
最大使用電圧の0.92倍の電圧 |
最大使用電圧が7,000Vを超え60,000V以下の巻線(上段に掲げるものを除く。) |
最大使用電圧の1.25倍の電圧(10,500V未満となる場合は、10,500V) |
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