変圧器の全日効率というのは、「1日の間に変圧器に入力した電力量」に対する「出力された電力量」の値をいいます。
入力と出力の値が違うのは、入力してから出力されるまでに電力の損失が発生しているからですが、この損失には大きく分けて鉄損と銅損の2種類があります。
鉄損
鉄損は無負荷損ともいいます(本当は無負荷損の一種が鉄損なのですが、電験三種では大体イコールと思って問題ありません)。これは、鉄損が変圧器の鉄心で発生する損失であり、一次側に電圧が加わってさえいれば、負荷電流が流れていなくても生じてしまう損失なので、このように呼ばれています。
鉄損はさらにヒステリシス損とうず電流損に分けることができます。
ヒステリシス損は、鉄心の磁束が磁界の履歴に依存するために発生します。これを低減するために電磁鋼板が磁気回路に広く用いられています。
うず電流損は、交流磁束によって誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生します。そこで、電気抵抗が高い強磁性材料や、表面を絶縁膜で覆った薄い鉄板を積層した積層鉄心を磁気回路に用いて、電流の経路を断つことで損失を低減します。
また、それぞれの損失を表す式は以下の通りとなります。
- Ph:ヒステリシス損 [W/kg]
- kh、kh‘:比例定数
- f:周波数 [Hz]
- Bm:最大磁束密度 [T]
- V:電源電圧 [V]
- Pe:うず電流損 [W/kg]
- ke:比例定数
ただし、ここでは紹介までに式を載せてありますが、実際の試験問題では式が与えられるか損失が予め数字として出ていることが多いです。そのため、無理に式を覚えようとしなくても構わないと思います。
銅損
銅損は負荷損ともいいます(本当は負荷損の一種が銅損なのですが、ここでも大体イコールと思って大丈夫です)。これは、変圧器に負荷電流を流したときの巻線(銅線)で消費する電力なので、無負荷時は銅損が生じません。
銅損を表す式は以下の通りとなります。
- Pc:銅損 [W]
- I1、I2:一次側または二次側の電流 [A]
- r1、r2:一次側または二次側の抵抗 [Ω]
全日効率
変圧効率は「1日分の入力」に対する「1日分の出力」であると最初に説明しましたが、上記のことを踏まえると、1日分の入力というのは、出力と鉄損と銅損の和であるとも表現できるので、以下のようになります。
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