発電機の並行運転・速度調定率

この項では、同期発電機が並行運転する際の有効電力・無効電力の分担について解説をします。まず、下の図をみてください。

これが2台の同期発電機に対して1つの負荷が接続されている状態です。同期発電機が正常に並行運転をおこなうためには、次のような条件が揃わなければなりません。

  1. 電圧の大きさと位相が等しい
  2. 周波数が等しい
  3. 電圧の相回転方向が一致している

これは同期発電機の数が3台、4台…増えても同様です。

この2台(以上)の発電機がうまく有効電力・無効電力を分担して供給することで並行運転が可能になるのですが、この分担について、有効電力と無効電力のそれぞれに分けて説明していきます。


まずは有効電力の分担について解説します。

有効電力の分担を決めるのは「調速機」です。調速機とは、原動機の回転速度を安定化させるための装置です。

2台の発電機が並行運転していて1台が故障したら、瞬間的に供給電力に対して負荷が大きくなりすぎてしまいます。すると供給電力と負荷のバランスを保つために原動機の回転数は下がる方向に向かいます。

そのままだと回転速度がどんどん下がってしまいますが、調速機がここで発電機に対して供給動力を増加させ、原動機の回転速度の低下を抑えさせることで、電力系統を安定化させます。

以上の話は発電機が故障した場合ですが、今度は負荷が切り離された場合を考えます。そうすると、今度は空運転により原動機の回転速度が異常に上がってしまいますが、これを抑えるのも調速機の役割です。

このような場合の回転速度と発電機出力の関係を「速度調定率」といい、以下の式で表されます。

上式をもう少し具体的に表すと以下のようになります。

  • R:速度調定率 [%]
  • P1:初期出力[MW]
  • P2:変化後の出力[MW]
  • Pn:定格出力[MW]
  • n1:出力P1における回転速度[min-1]
  • n2:変化後の出力P2における回転速度[min-1]
  • nn:定格回転速度[min-1]

ここで、よくあるパターンとしては、定格で運転していたところ急に負荷が切り離される(負荷の出力=0[W])という例が挙げられます。その場合、P1=PnかつP2=0なので、上式は下式のように書き換えることができます。

  • R:速度調定率 [%]
  • n0:無負荷時の回転速度[min-1]
  • nn:定格回転速度[min-1]

上で紹介した式よりもこちらの式を使う問題のほうが出題されやすいので、こちらの式の形で覚えてしまってもよいと思います。

以上のように、並行運転している複数台の発電機について有効電力の分担を変えたければ、速度調定率を変更すればよい、ということになります。


次に、無効電力の分担について考えます。

結論からいうと、無効電力の分担は界磁電流の調整によりおこなわれます。以下の図をみてください。

ここでAの界磁電流を増加させると両発電機間に誘導起電力の差が生じ、無効横流(無効循環電流)が流れます。この電流はAにとっては90°遅れ電流となり、界磁を弱めます。一方、Bにとっては90°進み電流になるので界磁を強めます。そうすることで、両発電機間の誘導起電力の差が小さくなるという仕組みです。

このように、界磁電流を増減させることで無効電力の分担が決まります。

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