家庭や工場が電気を使うのは時間帯や天気、気温などによってムラがあります。しかし、火力発電や原子力発電はあまり負荷の変動に寛容ではなく、なるべく一定の運転を続けたほうが効率が良くなります。
そこで、夜などの低負荷時に火力発電や原子力発電で得られた余剰エネルギーを使って、低地の水をポンプで高地へ揚げ(=揚水)、この水を使って昼間の重負荷時に水力発電として発電する方法を「揚水発電」といいます。
水力発電は火力や原子力の場合と異なり、負荷変動に対して出力を変動させられるので、このようなことができます。電力を使って水を揚げ、その水を落として発電する、というのは途中の損失を考慮すれば全体でみて非効率です。しかし、電力の余ってるときに消費して、足りないときに補充できる、という点が意味のある発電方法といえます。
このように、水を揚げるポンプと、落とした水を受ける水車の両方が備わった発電所を揚水発電所と呼びますが、普通はポンプと発電所が一体になった「ポンプ水車」を用います。水力発電の水車にはランナがありましたが、ポンプ水車で揚水する際には、このランナが逆回りしてポンプの役割をします。
また、水力発電の発電機に対して、揚水発電では発電電動機というものがあります。これは発電の際には発電機(運動エネ→電気エネ)、揚水の際には電動機(電気エネ→運動エネ)の役割を果たします。
揚水発電所は、その水源によって「純揚水式」と「混合揚水式」に分かれます。純揚水式は、上部のダムのところへ流れ込む水はなく、水源のすべてを揚水に頼るような発電所です。対して混合揚水式は、水がダムへ流入できるような河川があって、水源が河川と揚水の両方であるような発電所を指します。
次に、揚水発電所の効率計算について解説をします。
揚水発電では、まず揚水する段階では電動機とポンプを使います。つまり、電動機によって電気エネルギーを運動エネルギーに変え、ポンプによって運動エネルギーを位置エネルギーに変えます。ここで、電動機の効率(ηm)とポンプの効率(ηp)による2種類の損失が生じます。
その後、発電する段階では水車と発電機を使います。ここでも水車の効率(ηT)と発電機の効率(ηG)による2つの損失があります。
以上を踏まえて揚水時の消費電力P1[kW]について考えます。毎秒の揚水量をQ[m3/s]、揚げる水位をH[m]、損失水頭をh[m]とすると、理論上は
となります。しかし実際にはここに電動機の効率(ηm)とポンプの効率(ηp)が効いてくるので、
が正しい式となります。
続いて発電時の発電電力P2[kW]について考えます。揚水時と同様に考えると、流量Q[m3/s]、落差H[m]、損失水頭をh[m]から、理論値は
となり、そこに水車の効率(ηT)と発電機の効率(ηG)を加味すると、
と表されます。
よって、全工程の効率を考える際は、(発電電力)/(消費電力)とすればよいので、総合効率(η)は次のようになります。
- η:総合効率
- H:落差 [m]
- h:損失水頭 [m]
- ηT:水車の効率
- ηG:発電機の効率
- ηm:電動機の効率
- ηp:ポンプの効率
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