磁性材料

この項では「磁性材料」を、次の項では「絶縁材料」を、その次の項「導電材料」を扱います。毎年、この磁性材料・絶縁材料・導電材料のいずれかから1題(5点分)出題されています。

変圧器や回転機など、電気機器には鉄心を使うものが数多くあります。この鉄心に使われるのが磁性材料で、磁性材料には「強磁性体」が用いられます。磁性材料や強磁性体というのは、磁石に良くくっつく性質を持つ物質を指す言葉です。例えば、鉄やコバルト、ニッケルなどが挙げられます。

また、磁性材料はその用途によって別の呼び方もあり、磁束を通す目的では「磁心材料」、永久磁石を作る目的では「磁石材料」と呼ばれます。

磁心材料として使うには、透磁率や抵抗率、飽和磁束密度の大きいものを選びます。また、保磁力と残留磁気は小さいほうが有利です。一方の磁石材料は、保磁力や残留磁気の大きいものを選びます。

磁心材料としてよく使われるものは、けい素鋼とアモルファスです。

けい素鋼は鉄にけい素を数%加えたもので、透磁力と抵抗率が高いという特徴があります。

アモルファスは結晶構造を持たない物質で、非晶質などと呼ばれることもあります。けい素鋼と比較しても透磁率と抵抗率はともに高く、鉄損が少ないという特徴を持つ優れた材料ですが、飽和磁束密度が小さいのと、加工のしにくさ、高価であることが難点です。

交番磁界中に磁性体を置くと鉄損が発生しますが、これは「ヒステリシス損」「渦電流損」から成ります。

ヒステリシス損の説明をするため、まずはヒステリシス曲線について考えます。ヒステリシス曲線とは、横軸に磁界の強さHを、縦軸に磁束密度Bをとった曲線のことで、以下の図のようになります。

最初、磁性体が磁化されていない状態が原点です。ここに磁界Hを与えると、同時に磁束密度Bも上がり、グラフの右上に進みます。ここで再びHを0まで減らしても、Bは0にはならず、Hを負(逆方向)にすることでやっと、Bは0になります。この過程で、H=0のときのBが「残留磁気」、B=0のときのHが「保磁力」です。

さらにHを減らしたり増やしたりすることで、上図のようなグラフが完成します。これがヒステリシス曲線ですが、原点から伸びる部分を除くとループ状になるので、特にこのループのことをヒステリシスループと呼びます。

このループを1周すると、その面積に相当するエネルギーが磁性体の帯びる熱となって消費されます。これがヒステリシス損です。つまり、ヒステリシス損はヒステリシスループの面積に比例します。

もうひとつの鉄損が渦電流損です。これは磁性体に交番磁界を加えたときに、電磁誘導による渦電流が流れてしまうことによる損失です。

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