各水車の比較

前項では様々な水車の個々の特徴を見ていきましたが、この項ではそれらを比較してみたいと思います。

まず、水車の性能を考える上で大切なのは、前項で扱った比速度です。比速度とは、実物の水車を相似形で縮小した仮想水車に対し、1[m]の落差で1[kW]の出力を生じさせるときの回転速度[min-1]のことです。つまりは比速度が大きければ大きいほどその回転数は高くなり、実物の水車が小型(軽量型)で済むということです。

しかし、実際には比速度を上げすぎると、それはそれで問題が生じます。具体的には、応力が増大して水車の強度が負けたり、以下で説明する「キャビテーション」という現象が生じて水車が痛んだりします。

水車の流水中で圧力の低い部分ができると、水の一部が気化して水蒸気となって気泡を作ります。この気泡が圧力の高い部分へ移動するとその圧力に押しつぶされ、ランナなどに衝撃を与えてランナに損傷を与えます(この損傷を壊食と呼びます)。

この一連の現象がキャビテーションです。これは水力発電にとって明らかに悪影響ですので、このキャビテーションの発生を抑える必要があります。それには具体的には次のような対策があります。

  • 水車の比速度を上げすぎない
  • 吸出し管の高さを低くする
  • 吸出し管内に適度に空気を吹き込む
  • 負荷のムラをなるべくなくし、均一な運転をする
  • 壊食の起こる部位に、腐食しにくい金属素材を用いる

以上のことから、比速度は大きすぎず、小さすぎず、というのが大切ということになります。水車の種類によっても比速度の許容範囲が異なりますが、比速度の限界については経験則によって導き出した数字が大体決まっています。

また、大事なこととして、比速度と落差の関係はおおよそ反比例になるということを覚えてください。以下の表の関係は覚えておくと便利です。

ちなみに、一般的に、同じタイプの水車の中でも比速度と落差は反比例します。ただし、ペルトン水車のみ、落差が変わってもあまり比速度には影響を与えません。

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