前項では汽力発電の肝である、水(蒸気)の流れを解説しました。一方、汽力発電は火力発電の一種であり、燃料を燃やして熱源を得ています。ものを燃やすためには空気(より正確には酸素)が必要であり、汽力発電でも大量の空気を使っています。
本項では、この空気がどのような経路で、どういう風に使われるのかについて解説をします。
まず、大雑把な流れを先に示しておきます。
空気は「押込ファン(押込通風機)」から「空気予熱器」に入り、次いで「ボイラ」へと進みます。ボイラでの燃焼が空気の主な役割なので、これ以降は排ガスという扱いになります。ボイラを出た排ガスは「節炭器」と「空気予熱器」を抜けて、「電気集じん装置」を通り、「脱硫設備」、「誘引ファン(誘引通風機)」を経て煙突から排出されます。
これらのそれぞれについて、もう少し詳しく解説をしていきます。
押込ファン(押込通風機)
押込ファンは、外の空気を施設の中へ送り込むためのファンです。
最終工程で、施設の外へ空気を送り出すためのファンは誘引ファンです。混同しないように気をつけてください。
空気予熱器(熱を受け取る側)
空気は燃料の燃焼に使われますが、この空気が冷えていると燃焼効率が悪く、熱い空気を使えば燃焼効率は良くなります。そのため、ボイラの手前で事前に空気を温めておこう、という設備がこの空気予熱器です。
ここでの熱源は、排ガスです。節炭器を抜けたあとの排ガスはまだ熱いので、排ガスが持っている熱エネルギーを新鮮な空気が受け取る、ということで全体の熱効率を上げることができます。
ボイラ
ここでいうボイラとは、前項で出てきた蒸発管のことではありません。蒸発管の外側で、蒸発管を熱するための燃料が燃えている空間(燃焼室)をイメージしてください。ここで燃料と蒸発管内の水との熱交換が行われ、燃焼に使われた空気はこれ以降、排ガスという扱いになります。
節炭器(エコノマイザー)
ボイラから出てきた排ガスはかなり熱く、これをそのまま捨てるのは熱エネルギーの無駄になります。そこで、この節炭器では、排ガスの持つ熱をボイラ(蒸発管)へ入る直前の給水を過熱するために使います。
この工程を、廃熱回収と呼ぶこともあります。節炭器という名前は、「石炭を節約する」というところから来ています。今の時代は燃料が石炭とは限りませんが、ともかく、熱効率を上げて燃料を節約できる、という意味が含まれています。
また、節炭器を「エコノマイザー」と呼ぶこともあります。まったく同じものです。
空気予熱器(熱を与える側)
節炭器を抜けた排ガスもまだ熱を持っているため、今度は燃焼室に入る直前の空気を温めるのに使います。
節炭器では排ガスの熱で水を温め、空気予熱器では排ガスの熱で空気を温めます。しっかりと区別して覚えていてください。
電気集じん装置
排ガスは空気と燃料のカスが混じり合っているので、やや汚いです。そのガスをこのまま煙突から出すわけにはいかないので、この電気集じん装置と、次の脱硫設備があります。
電気集じん装置では、排ガス中に含まれている灰や塵(ちり)のような固体を取り除きます。その仕組みは、電極に高電圧をかけ、発生したコロナ放電により生じたイオンで微粒子を帯電させ、クーロン力によって集じん電極で捕集するというものです。
ちなみに集じん装置の「じん」は「塵」と書きます。電流を流して灰や塵を電気的に吸着させるため、このような名前になっています。
脱硫設備
脱硫設備は、脱硫黄設備の略だと思ってください。原油などの燃料にはある程度の硫黄分が含まれていますが、これをそのまま排ガスとして出してしまうと環境汚染につながります。そこで、この脱硫設備で硫黄分を取り除きます。
誘引ファン(誘引通風機)
誘引ファンは煙突の前に設置されます。ここで排ガスを引き込んで、排ガスを煙突へと導きます。
最初の押込ファンとこの誘引ファンによって、空気の流れをコントロールしています。
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