水車の比速度

水車の比速度とは、実物の水車を相似形で縮小した仮想水車に対し、1[m]の落差で1[kW]の出力を生じさせるときの回転速度[min-1]のことです。要するに、水車には様々な大きさや形状のものがありますが、その能力を比較するために単位高さ・単位出力あたりの回転速度を求めることで、基準を揃えた能力を知ることができる、というわけです。

水車の比速度の公式は以下のとおりです。この式は重要ですので、ぜひ覚えておいてください。

  • ns:比速度[m-kW]
  • nn:実物水車の回転速度[min-1]
  • P:実物水車の出力[kW](ランナorノズル1個あたりの出力)
  • H:実物水車の有効落差[m]

ここで注意しておきたいのは、比速度の単位です。教科書や参考書の多くで[m-kW]と表記されていますが、これは単位というより、ただの記号だと思ってください。

というのも、[m-kW]は比速度の単位ではなく、落差と出力の単位が[m]と[kW]で計算した比速度だということを表す記号だからです。日本ではこれが主流ですが、国によっては落差と出力を[ft]と[HP]で表すため、比速度のうしろに[ft-HP]とつけます。

少し脱線しましたが、話を式そのものに戻します。

この式をみてわかるとおり、比速度を出すには実物水車の回転速度、出力、有効落差の情報が必要です。一方、実物水車の回転速度を知るためには、比速度と実物水車の出力、有効落差を知る必要があります。

このように、4つのパラメーターの中から3つが与えられていて、残り1つを計算で求める…というような出題がみられます。つまり、この公式さえ覚えておけば、もうこの項は終了です。

以下にこの式の導出を示しますが、こと電験三種の試験対策という観点からは、無視しても構いません。

(参考) 比速度の公式の導出

まず、水車の流量Q[m3/s]は流速v[m/s]と断面積π(D/2)2[m2]から与えられます。Dは直径の長さです。

よって、ある水車の流量Q1と、それと相似な別の水車の流量Q2の関係は次のようになります。

一方、vとHの関係は有効落差のページで紹介した通り、以下の式になります。

(2)式と(3)式を合わせると、以下の(4)式が得られます。

また、PとQの関係も有効落差のページで解説済みで、それは以下の(5)式です。

(4)式と(5)式を合わせると、以下の(6)式、(7)式が得られます。

ここで、再び有効落差のページに載せた式を使いますが、(8)式、(9)式から(10)式が導けます。

(7)式と(10)式を合わせると、以下の(11)式が得られます。

ここで、話を冒頭の比速度に戻します。比速度の話では1[m]の落差で1[kW]の出力のもとでの仮想水車を使うので、(11)式のP2とH2はともに1になります。よって、(11)式は次の(12)式に書き換えることができ、それが冒頭の式と等価になります。

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