電験三種 R2年 法規 問4 問題と解説

 問 題     

次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく架空電線路からの静電誘導作用又は電磁誘導作用による感電の防止に関する記述である。

a) 特別高圧の架空電線路は、( ア )誘導作用により弱電流電線路(電力保安通信設備を除く。)を通じて( イ )に危害を及ぼすおそれがないように施設しなければならない。

b) 特別高圧の架空電線路は、通常の使用状態において、( ウ )誘導作用により人による感知のおそれがないよう、地表上1mにおける電界強度が( エ )kV/m以下になるように施設しなければならない。ただし、田畑、山林その他の人の往来が少ない場所において、( イ )に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •   ア     イ     ウ  エ
  1. 電磁  人体   静電  3
  2. 静電  人体   電磁  3
  3. 静電  人体   電磁  5
  4. 静電  取扱者  電磁  5
  5. 電磁  取扱者  静電  3

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

( ア )と( ウ )の選択肢を確認すると、一方に「電磁」が入り、他方に「静電」が入ることがわかります。そこで、まずはこれらの用語の解説をします。

誘導障害とは、電力線に近接した通信線や人に対して誘導電圧が発生してしまうことです。送電線の誘導障害には、「静電誘導障害」と「電磁誘導障害」があります。

静電誘導障害に関して、送電線と通信線の間、通信線と大地の間にはそれぞれキャパシタンス(静電容量)がありますが、前者(送電線と通信線との間)の静電容量が大きいときには、通信線に電圧が生じ、通信障害や感電が起こります。この現象を、静電誘導障害といいます。

電磁誘導とは、送電線と通信線の間の相互インダクタンスによって生じる障害です。電力線を流れる電流によって通信線に電圧が生じ、通信障害などの悪影響を与えます。

上記のことを簡単にまとめると、誘導電圧の発生原因が電圧であれば静電誘導、電流であれば電磁誘導となります。

ここで、b)の文章の対策として電界強度[kV/m]を下げることが挙げられているので、これは電圧が原因となる静電誘導の話であると判断することができます。よって、( ウ )には「静電」が入り、そうすると( ア )は「電磁」になります。

( イ )には「人体」または「取扱者」が入りますが、b)の文章の( イ )の直前にある「人の往来が少ない場所」の記載から、取扱者以外の人の往来も少しはあり得ることがわかります。よって、それらの人の安全確保も重要なので、( イ )は「人体」を入れるのが適切です。

残りの( エ )はややマイナーな知識ですが、( ア )~( ウ )がきちんと答えられればすでに選択肢は(1)だけしか残っていないので、ここはあまり気にしなくてもよいかもしれません。

一応正解を示しておくと、静電誘導作用により人が感電しないよう、特別高圧の架空電線路は地表上1mにおける電界強度を3kV/m以下にするよう定められています。そのため、( エ )には「3」が入ります。

以上から、正解は(1)です。

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