電験三種 H30年 機械 問11 問題と解説

 問 題     

次の文章は、直流を交流に変換する電力変換器に関する記述である。

図は、直流電圧源から単相の交流負荷に電力を供給する( ア )の動作の概念を示したものであり、( ア )は四つのスイッチS1~S4から構成される。

スイッチS1~S4を実現する半導体バルブデバイスは、それぞれ( イ )機能をもつデバイス(例えばIGBT)と、それと逆並列に接続した( ウ )とからなる。

この電力変換器は、出力の交流電圧と交流周波数とを変化させて運転することができる。交流電圧を変化させる方法は主に二つあり、一つは、直流電圧源の電圧Eを変化させて、交流電圧波形の( エ )を変化させる方法である。

もう一つは、直流電圧源の電圧Eは一定にして、基本波1周期の間に多数のスイッチングを行い、その多数のパルス幅を変化させて全体で基本波1周期の電圧波形を作り出す( オ )と呼ばれる方法である。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    (ア)     (イ)    (ウ)   (エ)   (オ)

  1. インバータ オンオフ制御 サイリスタ 周期  PWM制御
  2. 整流器   オンオフ制御 ダイオード 周期  位相制御
  3. 整流器   オン制御   サイリスタ 波高値 PWM制御
  4. インバータ オン制御   ダイオード 周期  位相制御
  5. インバータ オンオフ制御 ダイオード 波高値 PWM制御

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

( ア )に関して、交流を直流に変換する装置が整流器であり、反対に、直流を交流に変換する装置がインバータです。今回は問題文の最初に「直流を交流に変換する」とあるので、( ア )には「インバータ」が入ります。

( イ )について、インバータのスイッチは4つありますが、これらのスイッチのオン・オフの組み合わせには以下の2パターンがあります。

  • S1とS4がオンで、S2とS3がオフ
  • S2とS3がオンで、S1とS4がオフ

問題の図を見ながら、1つ目の条件について考えてください。すると、直流電圧源の+から出た電流がS1を通って交流負荷に入ります。その後、S4を通って直流電圧源の-へ戻ります。このとき、交流負荷の上の線から入って下の線から出たことを、ひとまず覚えておいてください。

今度は2つ目の条件について考えます。すると、直流電圧源の+から出た電流がS3を通って交流負荷に入ります。その後、S2を通って直流電圧源の-へと戻ります。このとき、交流負荷の下の線から入って上の線から出ていることがわかります。つまり、先ほどとは反対向きです。

よって、スイッチのオン・オフを上記の2パターンで交互に繰り返すことにより、負荷に流れる電流の向きをくるくる反転させて交流を作るというのがインバータの原理です。

以上から、スイッチはオンだけでなくオフにする必要もあるので、( イ )には「オンオフ制御」が入ります。

( ウ )は正解を先に書くと、ここには「ダイオード」が入り、このように逆並列に接続するダイオードのことを還流ダイオードといいます。図示すると以下の図のような配置になります。

還流ダイオードの役割は、直流電圧源に逆電流が流れるのを防止することです。直流電圧源は一定方向にしか電流が流れないという前提なので、この向きと逆方向の電流が入ってくると故障の原因につながります。

ここで、なぜ還流ダイオードがないと直流電圧源に逆電流が流れるのかという話ですが、インバータではスイッチのオン・オフを繰り返していることがポイントとなります。

普通、負荷Zには抵抗Rの要素だけでなく、リアクタンスXの要素も含んだ合力のことを指します。そのため、スイッチの切り替えが瞬時に行われたとしても、流れる電流の方向が瞬時に切り替わるわけではありません。リアクタンスの影響によりタイムラグが生じます。

そのため、一時的にですが、スイッチにより結ばれた回路の形に対して、望まない向きに電流が流れることになってしまう時間帯があります。しかし、還流ダイオードが備えられていれば、この望まない向きの電流を逃がすことができるので、直流電圧源に逆電流が入ってしまう前に対処することができます。

よって、( ウ )には「ダイオード」が入ります。

( エ )について、これは直前に「電圧Eを変化させて」とあるので、電圧を表すsinカーブの波の高さが高くなる(または低くなる)ということなので、「波高値」を入れるのが適切です。

( オ )は「位相制御」か「PWM制御」が入りますが、ここではパルス幅を変化させるだけで位相については操作していないので、位相制御は不適で、PWM制御が正しいことになります。

PWMはPulse Width Modulationの略で、パルス幅変調と訳されます。その名前からもわかる通り、パルスの幅を調整することによって、1サイクル全体で目的の電圧波形を得るという制御の仕方です。

よって、( オ )には「PWM制御」が入ります。

以上から、正解は(5)です。

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