問 題
電気使用場所の配線に関し、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 次の文章は、「電気設備技術基準」における電気使用場所の配線に関する記述の一部である。
① 配線は、施設場所の( ア )及び電圧に応じ、感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
② 配線の使用電線(裸電線及び( イ )で使用する接触電線を除く。)には、感電又は火災のおそれがないよう、施設場所の( ア )及び電圧に応じ、使用上十分な( ウ )及び絶縁性能を有するものでなければならない。
③ 配線は、他の配線、弱電流電線等と接近し、又は( エ )する場合は、( オ )による感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
- 状況 特別高圧 耐熱性 接触 混触
- 環境 高圧又は特別高圧 強度 交さ 混触
- 環境 特別高圧 強度 接触 電磁誘導
- 環境 高圧又は特別高圧 耐熱性 交さ 電磁誘導
- 状況 特別高圧 強度 交さ 混触
(b) 周囲温度が50℃の場所において、定格電圧210Vの三相3線式で定格消費電力15kWの抵抗負荷に電気を供給する低圧屋内配線がある。
金属管工事により絶縁電線を同一管内に収めて施設する場合に使用する電線(各相それぞれ1本とする。)の導体の公称断面積[mm2]の最小値は、「電気設備技術基準の解釈」に基づけば、いくらとなるか。正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、使用する絶縁電線は、耐熱性を有する600Vビニル絶縁電線(軟銅より線)とし、表1の許容電流及び表2の電流減少係数を用いるとともに、この絶縁電線の周囲温度による許容電流補正係数の計算式は(θは周囲温度で、単位は℃)を用いるものとする。
- 3.5
- 5.5
- 8
- 14
- 22
解 説
(a)
( ア )は選択肢を見ると「状況」または「環境」となっています。
どちらでも意味は通りそうですが、「環境」というと、周りの部分だけを指して、それ自身は含まないというニュアンスになってしまいます。今回は配線そのものの条件も含めて、施設場所の状況を考慮することが求められるので、「状況」を入れるのが妥当だと判断できます。
( イ )と( ウ )を含む②の文章は、配線に使用する電線は感電や火災事故が起こらないようなきちんとしたものを使いなさい、という文章です。
裸電線と( イ )の接触電線を除くとはなっていますが、これは裸電線などの場合は感電に気をつけなくてよいという意味ではなく、むしろ危険なのでより厳しい規定が別にあるということです。
問題文(a)①の文章は「電気設備技術基準」第57条1項からの出題ですが、これの2項には裸電線について、3項には特別高圧の配線について以下のように書かれています。
配線には、裸電線を使用してはならない。ただし、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な強度を有し、かつ、絶縁性がないことを考慮して、配線が感電又は火災のおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
特別高圧の配線には、接触電線を使用してはならない。
要するに、
- 普通の電線の場合は感電や火災に充分気をつけてください。
- 配線に裸電線は原則使ってはいけません(例外あり)。
- 特別高圧の配線には、接触電線を絶対使ってはいけません(例外なし)。
ということです。
よって、( イ )には「特別高圧」が入ります。
また、感電や火災の予防に求められるのは電線の耐熱性と絶縁性能だけではなく、外からの物理的な衝撃などにも耐えなくてはなりません。そのため、( ウ )には熱的強度や機械的強度といった様々な意味を併せ持つ「強度」を入れるのが適切です。
( エ )に関して、問8の選択肢にも「接近又は交差」とありますが、配線の分野では「接近」と「交差」は2つで1セットみたいなものです。よって、( エ )には「交さ」が入ります。
また、もうひとつの選択肢は「接触」となっていますが、そもそも配線において2つの電線が接触してはいけません。接触するのはもはや事故なので、「接触する場合は、感電や火災のおそれがないように~」などということは認められず、接触してしまった以上は感電や火災のリスクが高いという認識が必要です。
上記の通り、電線同士の接触により感電や火災が起こりやすくなるので、( オ )には「電線同士の接触」というような意味のものが入ります。電線同士の接触のことを「混触」というので、これが( オ )の答えです。
繰り返しになりますが、混触は事故の結果生じてしまう現象であって、意図して混触することは認められません。
また、もうひとつの選択肢は「電磁誘導」ですが、これについては問8でも扱ったように通信障害を起こす事象であって、火災などにつながるケースはほとんどないと思われます。
以上から、(a)の答えは(5)となります。
(b)
問われているのは導体の公称断面積ですが、それを知るには表1に記載されている許容電流を求める必要があります。そこで、まずは定格消費電力Pと定格電圧Vから、定格電流Iを計算します。
ここで、電線の許容電流は上記で求めた値よりも大きくなければいけません(そうでないと、ちょっとバランスが崩れただけで電線が損傷します)。そこで安全率として使うのが、問題文にもある許容電流補正係数と電流減少係数です。
許容電流補正係数k1はすでに問題文で式が与えられているため、これに数値を代入します。
一方、今回は三相3線式なので同一管内の電線数は3であるため、電流減少係数は表2からk2=0.70であるとわかります。
すでに求めた定格電流Iにこれらの係数を割ったものが許容電流I’となります。この際、Iに係数を掛けてしまうと、許容電流のほうが定格電流よりも小さいという致命的な矛盾が生じてしまうので、大小関係には注意してください。
よって、許容電流がわかったので、ここで再び表1を見ます。
許容電流が61[A]では足りないので、それより大きい88[A]を採用することになり、そのときの導体の公称断面積が14[mm2]なので、正解は(4)です。
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