電験三種 H28年 理論 問11 問題と解説

 問 題     

半導体に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 極めて高い純度に精製されたシリコン(Si)の真性半導体に、価電子の数が3個の原子、例えばホウ素(B)を加えるとp形半導体になる。
  2. 真性半導体に外部から熱を与えると、その抵抗率は温度の上昇とともに増加する。
  3. n形半導体のキャリアは正孔より自由電子の方が多い。
  4. 不純物半導体の導電率は金属よりも小さいが、真性半導体よりも大きい。
  5. 真性半導体に外部から熱や光などのエネルギーを加えると電流が流れ、その向きは正孔の移動する向きと同じである。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

(1)について、シリコン(ケイ素、Si)の価電子数は4であり、価電子は8になると安定状態となります。

(1)のように価電子3のホウ素を加えると、価電子数は4+3=7となり、安定状態まであと1つ電子が足りません。負の要素を持つ電子が不足しているということは、正である(正孔をもつ)ということなので、p(positive)形半導体となります。よって、これは正しい記述です。

一方、価電子5のものをシリコンに加えると、価電子は9となり電子が過剰なので、n(negative)形半導体となります。

(2)で、シリコンだけから成る真性半導体は、あるSi原子を中心に考えると、4つの価電子それぞれが隣接する別々のSi原子と共有結合をしています(そのため、Siの周りは計8個の電子があって安定状態となります)。

よって、ここに自由に動き回れる電子(自由電子)は存在しないので、低温条件下では電気の流れる余地がなく、真性半導体は絶縁体として扱われます。

しかし、高温条件下では、電子がエネルギーを得て基底状態(もともとの安定した状態)から励起状態(不安定な高エネルギー状態)へと励起します。すると、高準位の電子はそのエネルギーを使って動き回ることができるので、自由電子のように振る舞うため、このときは真性半導体でも良導体として扱うことができます。

ちなみに、低温でも高温でもなくその間の温度(たとえば常温)では、一部の電子だけが励起状態になり得るので、少しだけ電気が流れるという性質を持ちます。

以上のことから、温度の上昇とともに抵抗率は下がるといえるので、(2)の説明文は反対です。

(3)は(1)の解説の通り、電子が過剰な半導体のことなので、正しい記述です。

(4)については(1)と(2)の解説を参照すると考えやすいと思いますが、金属は自由電子を潤沢に持っていて、真性半導体は全く持っていません。一方、不純物半導体(p形半導体やn形半導体)は微量の不純物により、少しの電子や正孔を持つので、ある程度の導電率を有します。よって、これは正しい記述です。

(5)について、電流は+から-の方向へと流れますが、これは正孔の流れる向きと一緒です。一方、電子の流れは電流とは反対になります。よって、(5)も正しい記述です。

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