問 題
誘導機に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 三相かご形誘導電動機の回転子は、積層鉄心のスロットに棒状の導体を差し込み、その両端を太い導体環で短絡して作られる。これらの導体に誘起される二次誘導起電力は、導体の本数に応じた多相交流である。
- 三相巻線形誘導電動機は、二次回路にスリップリングを通して接続した抵抗を加減し、トルクの比例推移を利用して滑りを変えることで速度制御ができる。
- 単相誘導電動機はそのままでは始動できないので、始動の仕組みの一つとして、固定子の主巻線とは別の始動巻線にコンデンサ等を直列に付加することによって回転磁界を作り、回転子を回転させる方法がある。
- 深溝かご形誘導電動機は、回転子の深いスロットに幅の狭い平たい導体を押し込んで作られる。このような構造とすることで、回転子導体の電流密度は定常時に比べて始動時は導体の外側(回転子表面側)と内側(回転子中心側)で不均一の度合いが増加し、等価的に二次導体のインピーダンスが増加することになり、始動トルクが増加する。
- 二重かご形誘導電動機は回転子に内外二重のスロットを設け、それぞれに導体を埋め込んだものである。内側(回転子中心側)の導体は外側(回転子表面側)の導体に比べて抵抗値を大きくすることで、大きな始動トルクを得られるようにしている。
正解 (5)
解 説
この問題は誘導機の構造をかなり詳しく知っていないと解きにくい問題となっているので、個人的には捨て問題扱いとしてしまっても仕方ないと思います。
参考までに正解を示しておくと、(5)の記述が誤っています。
始動時には大きなトルクが必要となるのは(5)の記述の通りですが、内側(回転子中心側)の導体の抵抗値を外側(回転子表面側)よりも大きくするメリットはありません(むしろ小さくしたほうがよいです)。
始動直後は表皮効果(電流密度が導体の表面で高くなり、表面から離れるにつれ低くなっていく現象)が現れるので内側の導体に電流が流れることはありませんが、回転速度が上がってくると、内側の導体にも電流が流れてきます。
よって、内側の導体の抵抗値が大きいとしても、それで始動トルクが大きくなるわけではない上、むしろ電流が流れた際の損失が大きくなるので、(5)の記述が誤りだと判断できます。
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