「電熱」の分野の計算問題の多くは、比熱容量を使う問題か、ヒートポンプの成績係数(COP)を使う問題です。比熱を用いた加熱電力の計算のページでは比熱容量の考え方と計算方法を紹介したので、この項では成績係数(COP)について解説します。
ヒートポンプはヒートポンプの原理のページで紹介したような原理が問われることもあれば、計算問題として出題されることもあります。計算問題のときに大事なパラメータとして、成績係数(COP)は外せません。
成績係数(COP)とは、ヒートポンプの効率を示す指標で、消費電力量に対する得られた熱エネルギー量で表されます。つまり、たとえば100[kJ]を使って400[kJ]の熱を得たならば、その成績係数は400/100=4ということになります。
結論を先に示しておくと、熱交換器で吸収した熱量をQ[J]、ヒートポンプの消費電力量をW[J]としたとき、熱損失などを無視すると、ヒートポンプの成績係数(COP)は、冷房時は、暖房時はで与えられます。
前項で、ヒートポンプは消費エネルギーよりも多くの熱エネルギーが得られると書きましたが、つまり、成績係数(COP)は普通は1を超えます。成績係数(COP)は使用する機器や外気温などによって変化しますが、大体3~6くらいであることが多いです。
以下に上式に至る過程を解説しますが、基本的には成績係数(COP)は「得た熱エネルギー量÷消費電力量」であることと、冷房時と暖房時の式をそれぞれ覚えておけば、以下の説明文は読み飛ばしても構いません。
上図は、エアコン(冷房時)の動作概念図ですが、室内の熱交換器で吸収した熱量(=得られた熱エネルギー)をQ[J]、圧縮機での消費電力量をW[J]とすると、COPは「消費電力量に対する得られた熱エネルギー量」なので、冷房時は単純に、
が成り立ちます。
一方、暖房時には冷媒の流れる向きが図とは逆になるため、圧縮機の運転に使った電気エネルギーは熱エネルギーとなったあと、室内の熱交換器で室内を暖めるエネルギーとして使われます(冷房時には、圧縮機を運転するため消費した電気エネルギーは熱エネルギーに変換後、外気へ排熱していました)。
よって、得られる熱エネルギーはQ+Wとなるため、暖房時のCOPは、
が成り立ちます。
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