電気加熱の種類と特徴(誘電加熱)

電気加熱には様々な種類があり、代表的なものとして以下の5つが挙げられます。

  1. 抵抗加熱
  2. アーク加熱
  3. 誘導加熱
  4. 誘電加熱
  5. 赤外線加熱

この項では以上のそれぞれの特徴を解説しますが、特に重要なのは誘電加熱です。

抵抗加熱

抵抗加熱は、抵抗に電流が流れる際に発生する熱を熱源とする加熱方法です。いわゆるジュール熱のことで、発生する熱量はジュールの法則に従います。

この加熱方式は高効率であるので、電気ストーブやドライヤーなど、家庭用の電熱機器に多く使われています。

アーク加熱

電極(黒鉛)と被加熱物との間に大きな電圧を加えると、両者の間にある気体が絶縁破壊を起こし電流が流れます。この現象をアーク放電と呼び、このときの気体の抵抗率は極端に小さくなっているため電流はかなり大きくなり、それに伴い、発生する熱も何千度(たとえば5,000℃くらい)という高温になります。

アーク加熱には、直接加熱方式と間接加熱方式の2種類があります。直接加熱方式は、被加熱物を電極の一方または両方としてアークを飛ばすもので、アーク溶接などに使われています。間接加熱方式は、被加熱物には関係なく別に設けた電極間でアークを発生させ、その熱を放射や対流によって被加熱物に伝えるもので、アーク炉などに使われています。

誘導加熱

誘導加熱の「誘導」は、電磁誘導のことです。コイルの中に金属などの導電体を入れ、交流電源に接続して電流を流すと、交番磁界が発生することにより渦電流が流れます。

この現象が電磁誘導であり、こうして生じた渦電流がコイル中の導電体(金属など)を通過する際には、渦電流損やヒステリシス損が発生します。これらの損失は熱となりますが、この熱を利用した加熱方式が誘導加熱です。

家庭用ではIH調理器などに、工業的には溶接などにこの方式が用いられています。

誘電加熱

誘電体を交番電界中に置くと、誘電体の一つ一つの分子が様々な方向を向き、分子表面にある電荷の偏りもバラバラな方向で存在します。そこに高周波電圧を加えると、バラバラだった分子が一斉に同じ方向を向き、電圧の向きが変わるたびに分子の双極子が反転します(周波数が高いので、短い時間で分子の向きが何度も何度も反転を繰り返すことになります)。

この反転の際、隣り合った分子同士が接触し摩擦熱(=誘電損)が発生しますが、これを利用した加熱方法が誘電加熱です。

つまり、上記の誘導加熱は被加熱物が導電体であり、この誘電加熱は被加熱物が誘電体(≒絶縁体)であるのが特徴的です。誘電体の代表例としてはプラスチックやセラミック、油などが挙げられます。また、誘電加熱は、分子の振動によって被加熱物自身が発熱しているのも特徴的です。

ちなみに、マイクロ波加熱、高周波加熱と呼ばれるものも誘電加熱に含まれますが、周波数によって呼び方が変わってきます。

誘電加熱の代表例として、電子レンジがよく挙げられます。これは誘電加熱の中でも、周波数の関係でマイクロ波加熱に該当します。

赤外線加熱

赤外線を照射することにより、赤外線の持つ電磁波エネルギーを熱エネルギーに変換して加熱する方法が、赤外線加熱です。赤外線の中でも特に遠赤外線を用いることも多いため、この場合、特に遠赤外線加熱と呼ばれることもあります。

ハロゲンヒーターやカーボンヒーターが、赤外線加熱の例となります。

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