三相誘導電動機の始動

誘導電動機の始動時は、始動電流が大きくなり過ぎないように、そして、始動トルクが大きくなるようにする工夫が必要です。上手な始動の方法には主に5つのやり方がありますが、どのやり方を選ぶべきかは使用する電動機の種類によって異なってきます。

この項では、以下の5種類の電動機について、それぞれの電動機に向いている始動方法を解説していきます。

  • 三相巻線形誘導電動機
  • 三相かご形誘導電動機(定格出力・小)
  • 三相かご形誘導電動機(定格出力・中)
  • 三相かご形誘導電動機(定格出力・大)
  • 単相誘導電動機

三相巻線形誘導電動機の始動

三相巻線形誘導電動機は二次回路を調整することができるので、それを利用して始動します(かご形だと二次回路を調整できないので、一次回路を調整することになります)。

この方法は、二次回路をスリップリングで引き出して抵抗を接続し、二次抵抗値を定格運転時よりも大きな値に調整します。このとき、トルクの比例推移特性を利用して、トルクが最大となる滑りを1付近になるように調整することで、始動電流を小さく、そして、始動トルクを大きくすることが実現できます。

三相かご形誘導電動機の始動

三相かご形誘導電動機は、上記の通り二次回路を調整することができないので、一次回路を調整することになります。かご形の場合は、定格出力の大小によって3つの方法を使い分けるのが一般的です。

まず、定格出力が5[kW]以下の小容量のときは、全電圧始動という方法を使います。これは、特に大きな工夫もなく、直接電源電圧を印加する方法です。出力が小容量のため、電源系統に与える影響が小さいことから、このような方法をとることができます。

続いて、定格出力が5~15[kW]程度の中容量のときは、Y-Δ始動という方法を使います。この方法は、まず最初に固定子巻線をY結線にして電源電圧を加えて加速し、続いて、回転子の回転速度が定格回転速度に近づいたら、そこで固定子巻線をΔ結線に切り替えるという方法です。

つまり、始動時はY結線、通常運転時はΔ結線にコイルの接続を切り替えるというやり方です。こうすることで、最初からΔ結線のまま始動してしまう場合と比較して、始動電流も始動トルクも3分の1倍になります。始動トルクが下がることはデメリットといえますが、始動電流が下がるメリットが大きいので、これは有用な始動方法です。

最後に、定格出力が15[kW]以上の大容量のときは、始動補償器法という方法を使います。これは、まず三相単巻変圧器(始動補償器)を電源と電動機の間に挿入して、始動時の端子電圧を下げます。こうして低電圧を電動機に供給しつつ、回転子の回転速度が定格回転速度に近づいたら、全電圧を電動機に供給するという方法です。

このような使い方をする三相単巻変圧器を特に始動補償器と呼ぶので、始動補償器法という名前がついています。

単相誘導電動機の始動

単相誘導電動機の場合は、そのまま単独で始動することはできません。そこで、固定子の主巻線とは別の始動巻線を用意して、そこにコンデンサを直列に付加することによって回転磁界を作ることで回転子を回転させる、といったような方法をとります。

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