問 題
図のような系統において、昇圧用変圧器の容量は30MV・A、変圧比は11kV/33kV、百分率インピーダンスは自己容量基準で7.8%、計器用変流器(CT)の変流比は400A/5Aである。
系統の点Fにおいて、三相短絡事故が発生し、1800Aの短絡電流が流れたとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、CTの磁気飽和は考慮しないものとする。

(a) 系統の基準容量を10MV・Aとしたとき、事故点Fから電源側をみた百分率インピーダンスの値[%]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 5.6
- 9.7
- 12.3
- 29.2
- 37.0
(b) 過電流継電器(OCR)を0.09sで動作させるには、OCRの電流タップ値を何アンペアの位置に整定すればよいか、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、OCRのタイムレバー位置は3に整定されており、タイムレバー位置10における限時特性は図示のとおりである。

- 3.0A
- 3.5A
- 4.0A
- 4.5A
- 5.0A
解 説
(a)
設問(a)で問われているのは事故点Fから電源側をみた百分率インピーダンスの値%Z[%]です。
一次側の%Zと変圧器の%Zがわかっていれば、基準容量を合わせた上でそれら2つを足し合わせた値が答えとなります。しかし、今回は一次側の%Zが不明であるため、この解法は使えません。(このパターンで解く問題も頻出です。R5年度上期 問16など)
よって、%インピーダンス、定格電流、短絡電流をつなぐ式を使って%Zを計算する方法で考えていきます。これは重要公式としてぜひ押さえておいてください。
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- %Z:%インピーダンス [%]
- I:定格電流 [A]
- Is:短絡電流 [A]
ここで、Isは問題文より1800[A]なので、Iがわかれば%Zを求めることができます。
事故点のある二次側の定格電流Iは、基準容量10[MV・A]と二次側の定格電圧33[kV]から、次のように計算することができます。

よって、(2)式を(1)式に代入すると、%Zが算出できます。

以上から、正解は(2)となります。
(b)
これはやや難易度の高い問題です。出題頻度が低いテーマでもあるので、設問(a)さえきちんと解ければ、設問(b)は捨て問題として扱っても仕方ないと思います。
まず、求めたいタップ整定電流は次の式で表すことができます。

よって、CTの二次側電流とタップ整定電流の倍数を計算するのが当面の目標となります。
まずは考えやすいCTの二次側電流から解説します。
問題文より、CTの変流比は400A/5Aで、短絡電流は1800[A]なので、CTの二次側電流は次の(4)式のようになります。

次に、タップ整定電流の倍数について考えます。
与えられている図はタイムレバー位置10における限時特性の図ですが、今回のタイムレバー位置は3という条件です。
タイムレバー位置は動作時間に比例するため、位置1から位置10にすると動作時間は10倍になり、位置1から位置3にすると動作時間は3倍になります。つまり、位置10を位置3にしたら動作時間は3/10倍(=0.3倍)となるので、問題の図は次のように描き換えることができます。

上図と問題文より、OCRを0.09[s]で動作させるには、タップ整定電流の倍数を5にすればよいことがわかります。
よって、これと(3)式、(4)式を合わせると、タップ整定電流の値は次のように計算することができます。

以上から、正解は(4)となります。

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