電験三種 R5年度下期 電力 問10 問題と解説

 問 題     

我が国の地中送電線路に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 地中送電線路は、電力ケーブルを地中に埋設して送電する方式である。同じ送電容量の架空送電線路と比較して建設費が高いが、都市部においては用地の制約や、保安、景観などの点から地中送電線路が採用される傾向にある。
  2. 主な電力ケーブルには、架橋ポリエチレンを絶縁体としたCVケーブルと、絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙を絶縁体としたOFケーブルがある。OFケーブルには油通路が設けられており、絶縁油の加圧によりボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保するための給油設備が必要である。
  3. 電力ケーブルの電力損失において、抵抗損とシース損はケーブルの導体に流れる電流に起因した損失であり、誘電体損は電圧に対して絶縁体に流れる同位相の電流成分に起因した損失である。CVケーブルとOFケーブルの誘電体損では、一般にOFケーブルの方が小さい。
  4. 電力ケーブルの布設方法において、直接埋設式は最も工事費が安く、工期が短いが、ケーブル外傷等の被害のリスクが高く、ケーブル布設後の増設も難しい。一方で、管路式と暗きょ式(洞道式)は、ケーブル外傷等のリスク低減やケーブル布設後の増設にも優れた布設方式である。中でも暗きょ方式は、電力ケーブルの熱放散と保守の面で最も優れた布設方式である。
  5. 地中送電線路で地絡事故や断線事故が発生した際には、故障点位置標定が行われる。故障点位置標定法としては、地絡事故にはパルスレーダ法とマーレーループ法が適用でき、断線事故にはパルスレーダ法と静電容量測定法が適用できる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(1)は正しいです。地中送電線路に関する基本的事項が書いてあり、特に矛盾点もないため、これは判断しやすい選択肢だと思います。

(2)も正しいです。

CVケーブルは、絶縁体に架橋ポリエチレンを使用したケーブルです。OFケーブルと比較して絶縁体の誘電率、熱抵抗率が小さく、常時導体最高許容温度が高いため、送電容量の面で有利となります。

OFケーブルは、絶縁体として絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙絶縁ケーブルであり、油通路が必要であるというのが特徴的です。給油設備を用いて絶縁油に大気圧以上の油圧を加えることでボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保しています。

地中送電線路に使用される各種電力ケーブルにはほかにも数種類あります。それらがテーマとなった出題がH30年 問11にあるので、併せて確認しておいてください。

(3)は1文目は正しい記述ですが、2文目が誤っています。

(2)の解説の通り、CVケーブルはOFケーブルよりも絶縁体の誘電率や熱抵抗率が小さく、電気的な損失が少ないため、誘電体損が小さくなります。よって、(3)の「CVケーブルとOFケーブルの誘電体損では、一般にOFケーブルの方が小さい」という文章は反対です。

(4)は正しいです。地中ケーブルの布設方式は主に、直接埋設式、管路式、暗きょ式の3種類があります。これら3種類について端的にまとめると(4)のような記述となります。

これら3種類の特徴に関する出題は頻出テーマなので、もし知識に不安のある方は、R4年度下期 問10の解説を参照しておいてください。

(5)も正しいです。地中送電線は架空送電線と違って目に見えない(地中に埋まっている)ので、事故が発生したときに故障点を見極めるのが架空送電線に比べて難しいです。この故障点を見つけることを「故障点位置標定」といいます。

故障点位置標定の方法と適用できる事故の関係は次の通りです。

  • マーレーループ法:地絡事故に適用可
  • 静電容量法   :断線事故に適用可
  • パルスレーダ法 :地絡事故・断線事故ともに適用可

以上から、正解は(3)となります。

 

コメント