電験三種 R5年度下期 電力 問5 問題と解説

 問 題     

分散型電源に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 太陽電池で発生した直流の電力を交流系統に接続する場合は、インバータにより直流を交流に変換する。連系保護装置を用いると、系統の停電時などに電力の供給を止めることができる。
  2. 分散型電源からの逆潮流による系統電圧上昇を抑制する手段として、分散型電源の出力抑制や、電圧調整器を用いた電圧の制御などが行われる。
  3. 小水力発電では、河川や用水路などでの流込み式発電が用いられる場合が多い。
  4. 洋上の風力発電所と陸上の系統の接続では、海底ケーブルによる直流送電が用いられることがある。直流送電では、ケーブルを用いて送電する場合でも、定常的な充電電流が流れないため、その補償が不要である。
  5. 一般的な燃料電池発電は、水素と酸素との吸熱反応を利用して電気エネルギーを作る発電方式であり、負荷変動に対する応答が早い。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)は正しいです。太陽電池は直流電力を発生させるため、交流系統に接続する際にはインバータを使用して直流を交流に変換します。さらに、系統の停電時には連系保護装置が動作し、電力供給を停止します。この装置は、逆潮流を防ぎ、系統の安定性を保つために重要です。

(2)も正しいです。

本来であれば、電力は配電用変電所から配電線を通って需要家のところへ届けられます。しかし、需要家が太陽光発電や燃料電池発電などの自家発電を行っていて、発電が電力消費を上回った場合、本来とは反対向き(つまり、需要家→配電線)に電力が流れます。このような現象を「逆潮流」と呼んでいます。

また、需要家が持っている太陽光発電や燃料電池発電などの設備のことを「分散型電源」といいます。

そして、分散型電源からの逆潮流による系統電圧の上昇を抑制するためには、(2)に書かれているような分散型電源の出力抑制や電圧調整器を用いた電圧の制御などが有効です。

(3)も正しいです。小水力発電は、河川や用水路での流込み式発電が一般的です。これは、自然の水流を利用して発電を行う方式で、比較的環境への影響が少ないという利点があります。

(4)も正しいです。洋上風力発電所は、通常、海底ケーブルを使用して陸上の系統と接続されます。この際、直流送電が選ばれることが多いです。

直流送電が選ばれる理由の一つとして、交流送電で送電線やケーブルが長距離になる場合、ケーブルの静電容量によって充電電流が発生する一方、直流送電では定常的な充電電流が流れないことが挙げられます。

直流送電系統の特徴(メリット・デメリット)についてはH29 問6の解説にまとめてあるので、併せて確認しておいてください。

(5)が誤りです。この文章において「吸熱反応」が誤りで、正しくは「発熱反応」となります。

もしも水素と酸素との反応で吸熱してしまうなら、エネルギーが奪われているので電気エネルギーを作るどころではありません。

しかし、実際には水素と酸素との反応は「吸熱反応」ではなく「発熱反応」なので、熱エネルギーを取り出して電気エネルギーを作ることができます。

燃料電池の化学反応式は、以下の通りです。

これは水の電気分解の逆反応になっています。水を電気分解するためには結構なエネルギーを外から加えなければいけませんが、裏を返せば、水素と酸素を反応させて水にすれば、結構なエネルギーが取り出せるということになります。

また、(5)の文中にある「負荷変動に対する応答が早い」という特徴は正しいです。水素自動車はこの燃料電池の実例であり、自動車はまさに負荷変動が激しいですが、問題なく運転できるほどの応答の早さをもちます。

以上から、正解は(5)となります。

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