問 題
次の文章は、真空中における電子の運動に関する記述である。
図のように、x軸上の負の向きに大きさが一定の電界E[V/m]が存在しているとき、x軸上に電荷が-e[C](eは電荷の絶対値)、質量m0[kg]の1個の電子を置いた場合を考える。
x軸の正方向の電子の加速度をa[m/s2]とし、また、この電子に加わる力の正方向をx軸の正方向にとったとき、電子の運動方程式は
m0a=( ア ) … ①
となる。①式から電子は等加速度運動をすることがわかる。したがって、電子の初速度を零としたとき、x軸の正方向に向かう電子の速度v[m/s]は時間t[s]の( イ )関数となる。
また、電子の走行距離xdis[m]は時間t[s]の( ウ )関数で表される。さらに、電子の運動エネルギーは時間t[s]の( エ )で増加することがわかる。
ただし、電子の速度v[m/s]はその質量の変化が無視できる範囲とする。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (ア) (イ) (ウ) (エ)
- eE 一次 二次 1乗
- eE/2 二次 一次 1乗
- eE2 一次 二次 2乗
- eE/2 二次 一次 2乗
- eE 一次 二次 2乗
解 説
まず、①の式は電子の運動方程式なので、右辺の( ア )には電子に働く力、つまり静電気力F[N]が入ります。
静電気力F[N]は、電荷-e[C]と電界-E[V/m]との積で表すことができるので、電子の運動方程式は次のように表すことができます(電界にマイナスを付けているのは、この電子に加わる力(静電気力)の正方向をプラスとしているためです。問題の図を見てわかる通り、電子の運動方向(静電気力の向き)と電界の向きとは反対になります)。
- m0:電子の質量 [kg]
- a:電子の加速度 [m/s2]
- e:電子の電荷 [C]
- E:電界 [V/m]
よって、( ア )には「eE」が入ります。
続いて、問題文には「①式から電子は等加速度運動をすることがわかる」とさらっと書かれていますが、念のため、これについて少し詳しく解説しておきます。
(1)式を加速度aについて解くと、次に示す(2)式のようになります。
(2)式の右辺のパラメータ(e、E、m0)は全て定数なので、加速度aはconst.(一定)であることがわかります。よって、この電子の運動は等加速度運動であるといえます。
また、等加速度運動であることがわかれば、速度v[m/s]は時間t[s]を使って次の(3)式のように表すことができます。なお、問題文より初速度v0=0です。
よって、電子の速度v[m/s]は時間t[s]の一次関数となるので、( イ )には「一次」が入ります。
同様に、等加速度運動の距離xdis[m]と時間t[s]の関係は、以下の(4)式の通りとなり、xはtの二次関数となります。
よって、( ウ )は「二次」となります。
最後に、電子の運動エネルギーについて考えます。
( エ )では電子の運動エネルギーと時間t[s]の関係が問われていますが、電子の運動エネルギーは1/2m0v2[J]で表すことができます。
ここで、(3)式や( イ )から、tとvは一次関数の関係なので、電子の運動エネルギー1/2m0v2[J]はtの2乗に比例することがわかります。
よって、( エ )は「2乗」となります。
以上から、
- (ア):eE
- (イ):一次
- (ウ):二次
- (エ):2乗
となるので、正解は(5)です。
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