電験三種 R5年度下期 理論 問12 問題と解説

 問 題     

次の文章は、真空中における電子の運動に関する記述である。

図のように、x軸上の負の向きに大きさが一定の電界E[V/m]が存在しているとき、x軸上に電荷が-e[C](eは電荷の絶対値)、質量m0[kg]の1個の電子を置いた場合を考える。

x軸の正方向の電子の加速度をa[m/s2]とし、また、この電子に加わる力の正方向をx軸の正方向にとったとき、電子の運動方程式は

m0a=( ア ) … ①

となる。①式から電子は等加速度運動をすることがわかる。したがって、電子の初速度を零としたとき、x軸の正方向に向かう電子の速度v[m/s]は時間t[s]の( イ )関数となる。

また、電子の走行距離xdis[m]は時間t[s]の( ウ )関数で表される。さらに、電子の運動エネルギーは時間t[s]の( エ )で増加することがわかる。

ただし、電子の速度v[m/s]はその質量の変化が無視できる範囲とする。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  • (ア)  (イ)  (ウ)  (エ)
  1. eE   一次  二次  1乗
  2. eE/2  二次  一次  1乗
  3. eE2    一次  二次  2乗
  4. eE/2  二次  一次  2乗
  5. eE   一次  二次  2乗

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

まず、①の式は電子の運動方程式なので、右辺の( ア )には電子に働く力、つまり静電気力F[N]が入ります。

静電気力F[N]は、電荷-e[C]と電界-E[V/m]との積で表すことができるので、電子の運動方程式は次のように表すことができます(電界にマイナスを付けているのは、この電子に加わる力(静電気力)の正方向をプラスとしているためです。問題の図を見てわかる通り、電子の運動方向(静電気力の向き)と電界の向きとは反対になります)。

  • m0:電子の質量 [kg]
  • a:電子の加速度 [m/s2]
  • e:電子の電荷 [C]
  • E:電界 [V/m]

よって、( ア )には「eE」が入ります。

続いて、問題文には「①式から電子は等加速度運動をすることがわかる」とさらっと書かれていますが、念のため、これについて少し詳しく解説しておきます。

(1)式を加速度aについて解くと、次に示す(2)式のようになります。

(2)式の右辺のパラメータ(e、E、m0)は全て定数なので、加速度aはconst.(一定)であることがわかります。よって、この電子の運動は等加速度運動であるといえます。

また、等加速度運動であることがわかれば、速度v[m/s]は時間t[s]を使って次の(3)式のように表すことができます。なお、問題文より初速度v0=0です。

よって、電子の速度v[m/s]は時間t[s]の一次関数となるので、( イ )には「一次」が入ります。

同様に、等加速度運動の距離xdis[m]と時間t[s]の関係は、以下の(4)式の通りとなり、xはtの二次関数となります。

よって、( ウ )は「二次」となります。

最後に、電子の運動エネルギーについて考えます。

( エ )では電子の運動エネルギーと時間t[s]の関係が問われていますが、電子の運動エネルギーは1/2m0v2[J]で表すことができます。

ここで、(3)式や( イ )から、tとvは一次関数の関係なので、電子の運動エネルギー1/2m0v2[J]はtの2乗に比例することがわかります。

よって、( エ )は「2乗」となります。

以上から、

  • (ア):eE
  • (イ):一次
  • (ウ):二次
  • (エ):2乗

となるので、正解は(5)です。

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