電験三種 R5年度上期 機械 問5 問題と解説

 問 題     

三相同期発電機の短絡比に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 短絡比を小さくすると、発電機の外形寸法が小さくなる。
  2. 短絡比を小さくすると、発電機の安定度が悪くなる。
  3. 短絡比を小さくすると、電圧変動率が小さくなる。
  4. 短絡比が小さい発電機は、銅機械と呼ばれる。
  5. 短絡比が小さい発電機は、同期インピーダンスが大きい。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

同期発電機の短絡比Ksは、定格電流に対する短絡電流の比で求めることができます。これは重要公式として押さえておきたい知識です(本来、短絡比の定義は別にありますが、式変換の結果こうなりますし、計算問題では以下の式を使います)。

  • Ks:短絡比
  • Is:短絡電流 [A]
  • In:定格電流 [A]

また、以下に示すように、短絡比は百分率同期インピーダンスと逆数の関係となります。これも重要知識として覚えておいてください。

  • %Z:百分率同期インピーダンス [%]

よって、選択肢(5)の記述は正しいといえます。

続いて、短絡比が小さい(百分率同期インピーダンスが大きい)場合には、同期機は次の4つの特徴を持ちます。

『短絡比が小さいと…』

  1. 発電機の外形寸法が小さくなる。
  2. 銅機械と呼ばれる。
  3. 電圧変動率が大きくなる。
  4. 発電機の安定度が悪くなる。

1つ目について、短絡比が小さいということは同期インピーダンスが大きいということなので、電機子巻線の巻数は多いです。巻線が多いと鉄心が小さくて済むため、このような場合には、発電機自体の大きさは小さくすることができます。

よって、選択肢(1)は正しい記述です。

2つ目について、1つ目と関連しますが、巻線は銅製であるため、巻線が多いタイプ(=短絡比が小さい)の同期機は銅機械と呼ばれています。一方、鉄心は鉄製であるため、鉄心が大きいタイプ(=短絡比が大きい)の同期機は鉄機械と呼ばれます。

よって、選択肢(4)も正しい記述です。

3つ目について、電圧変動率とは、定格運転時の端子電圧に対する、無負荷時と定格運転時での端子電圧の差を百分率で表したものです。式で表すと以下のようになります。

  • ε:電圧変動率 [%]
  • Eo:内部誘導起電力(=無負荷運転時の端子電圧) [V]
  • Vn:定格運転時の端子電圧 [V]

短絡比が小さいと同期インピーダンスが大きくなるので、その分端子電圧は小さくなります。そのため、上式より、結果として電圧変動率は大きくなります。

よって、選択肢(3)の「短絡比を小さくすると、電圧変動率が小さくなる。」という記述が誤りで、実際にはこの反対となります。

4つ目について、同期機の安定度とは、電力に多少のむらが生じたときでも、同期速度を保ち続けられるかどうかの指標です。上記の通り、電圧変動率が大きくなると、それだけ同期速度を保つのが難しくなるため、安定度は下がります。

よって、選択肢(2)は正しい記述です。

以上から、正解は選択肢(3)となります。

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