問 題
水力発電に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 水管を流れる水の物理的性質を示す式として知られるベルヌーイの定理は、エネルギー保存の法則に基づく定理である。
- 水力発電所には、一般的に短時間で起動・停止ができる、耐用年数が長い、エネルギー変換効率が高いなどの特徴がある。
- 水力発電は昭和30年代前半まで我が国の発電の主力であったが、現在ではエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されており、我が国における水力発電の近年の発電電力量の比率は20%程度である。
- 河川の1日の流量を、年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いた流況曲線は、発電電力量の計画において重要な情報となる。
- 総落差から損失水頭を差し引いたものを一般に有効落差という。有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給される。
解 説
(1)は正しいです。ベルヌーイの定理は簡単にいえば流水に関するエネルギー保存の法則のことで、以下の式で表されます。
- h:基準からの高さ [m]
- v:流速 [m/s]
- p:圧力 [N/m2]=[Pa]
- ρ:水の密度=1000 [kg/m3]
- g:重力加速度=9.8 [m/s2]
- const.:constantの略で「一定」という意味
上式を文章で表現すると、非粘性流体(多くの場合、水)が管の中を流れているとき、そのうちどの点においても「位置エネルギー」と「運動エネルギー」と「圧力エネルギー」の和は一定である、ということになります。
(2)も正しいです。水力発電は短時間で起動・停止ができるため、電力需要に応じて稼働を調整できます。また、耐用年数は60~80年程度と、火力発電や原子力発電の耐用年数を大きく上回ります。
さらに、エネルギー変換効率も約80%と優秀です。たとえば火力発電なら約40%、原子力発電なら約30%、太陽光発電なら約20%となるので、水力発電の発電効率はかなり高いといえます。
(3)は前半の文章は正しいですが、最後の「水力発電~比率は20%程度」という部分が誤っています。2022年実績で、火力発電が70%程度、太陽光発電が10%程度、水力発電が7%程度となっています。年度によって多少の変動はありますが、近年は概ね横ばいであり、水力は毎年1割を下回っています。
なお、自然エネルギー(太陽光、水力、バイオマス、風力、地熱など)の合計が大体20%程度なので、その点からも、水力だけで20%程度もあると書かれている(3)はおかしいと判断できます。
(4)は正しいです。水力発電を行うにあたっては、河川の流量が重要な要素となります。雨量は季節や日によって大きく変化するため、その河川の年間流量がどのくらいあるのかを知ることだけでなく、量の変動がどれほどなのかを知ることも大事です。そこで、以下のように河川の流量を区分して、その河川の特徴を捉えます。
- 渇水量:年間で355日以上が該当する河川の流量
- 低水量:年間で275日以上が該当する河川の流量
- 平水量:年間で185日以上が該当する河川の流量
- 豊水量:年間で95日以上が該当する河川の流量
- 高水量:年間で1,2日程度該当する河川の流量
- 洪水量:3,4年に一度起こる河川の流量
そして、このことを図にして表したものを、流況曲線といいます。
(5)も正しいです。有効落差は、記述の通り、総落差から損失水頭を差し引いたもののことを指します。水力発電では有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給されますが、これを式で表すと以下のように書くことができます。
- Po:理論出力 [kW]
- Q:流量 [m3/s]
- H:有効落差 [m]
以上から、正解は(3)となります。
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