問 題
蒸気圧縮冷凍サイクルに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 圧縮機では、冷媒の比エンタルピーが上昇する。
- 凝縮器では、周囲へ熱を放出し冷媒が液化する。
- 蒸発器では、周囲から熱を奪い冷媒がガス化する。
- 膨張弁では、冷媒はガス化し圧力が上昇する。
- 冷凍サイクルでは、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器の順に冷媒が循環する。
解 説
(4)に関して、膨張弁は、冷媒の圧力を低下させる装置です。というより、冷媒に限らず物質全般に言えることですが、ものを外から圧縮すればそのものの圧力は上がり、逆に膨張させたらそのものの圧力は下がります。
よって、(4)の「冷媒はガス化し圧力が上昇する」が誤りで、冷媒は液体のままであり、その上で圧力が低下します。
試験本番ではこれ以上深入りする必要はないと思いますが、ここでは他の選択肢についても考えていきます。
下図は、蒸気圧縮式冷凍機を図示したものと、それに対応するモリエル線図です。
蒸気圧縮式冷凍機の各工程と比エンタルピーや圧力の変化は以下のようになります。上図を見ながら確認していってください。
まず、圧縮機ではガス化した冷媒を圧縮します。このとき、冷媒の比エンタルピーと圧力が上がります。よって、比エンタルピーと圧力が最も高い「ア」が圧縮機の出口直後に相当します。
続く凝縮器では、冷媒を液化させます。ここでは比エンタルピーは低下しますが、圧力変化はありません。モリエル線図でいえば、凝縮器の入口が「ア」、途中で「イ」を経て、出口では「ウ」となっています。
そのあとの膨張弁は、液化した冷媒をその名の通り膨張させます。膨張する分、圧力は低下しますが、比エンタルピーに変化はありません。モリエル線図では、膨張弁によって「ウ」が「エ」に移ります。
最後の蒸発器では、液体の冷媒をガス化(蒸発)させます。ガス化は冷媒が周囲の熱を奪って行われるので、この段階が冷凍機としてのメインの働きをしています。また、これは凝縮器で液化させたときの反対なので、比エンタルピーは増加しますが、圧力変化はありません。モリエル線図では、蒸発器によって「エ」が「オ」に移ります。
このあと、圧縮機に戻ってサイクルが1周します。
以上から、(1)~(3)、(5)はいずれも正しい文章と判断することができます。
よって、正解は(4)です。
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