ビル管理士試験 2024年 問36 問題と解説

 問 題     

振動に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 局所振動の場合、振動数が大きければ大きいほど健康影響は大きい。
  2. 局所振動により、レイノー現象といわれる指の末梢(まっしょう)循環障害が起こる。
  3. フォークリフトの運転の際の全身振動により、胃下垂が生じる。
  4. 局所振動による神経障害が進行すると筋肉が萎縮し、手指の伸展が困難となる。
  5. 道路交通などによる振動は、地面を伝搬し、建築物内で全身振動として知覚される。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

(1)が誤りです。ややマイナーな知識ですが、手持ち工具などの使用による局所振動は、オクターブバンドの中心振動数で約8~1000Hzの振動が問題となります。この数値を正確に覚えなくてもよいと思いますが、振動数が大きいほど健康影響が大きくなるわけではないというのは押さえておいてください。

(2)は正しいです。レイノー現象とは、寒さや緊張によって手足の指先が震え、色調が青白く(または赤紫色に)変わってしまう現象です。よって、これは冬季に起こりやすい局所振動障害です。

(3)も正しいです。胃下垂とは、文字通り胃が本来の位置よりも下に垂れ下がってしまう状態のことです。この状態だと胃の機能が低下して、胃もたれなどの症状が現れます。フォークリフトやトラクターなどの運転で垂直振動(鉛直振動)を受けると、胃の位置がずれてしまって胃下垂になるおそれがあります。

(4)も正しいです。全身振動による障害と局所振動による障害の区別は重要です。

全身振動は身体全体が揺れているため、自律神経が刺激されることによる、末梢血管の収縮、血圧の上昇、胃の働きの抑制等の症状が現れやすいです。また、物理的損傷としては、脊柱の変形などのおそれもあります。

一方、局所振動の場合、手なら手だけというように身体の一部が集中的に振動することにより、しびれや痛みなどの末梢神経障害が起こりやすいです。また、物理的損傷としては、骨や関節の変形などのおそれもあります。

(5)も正しいです。記述の通り、道路交通などによる振動は、地面を伝搬して建築物まで届きます。この際、振動レベルは一般的に屋外地面上よりも建築物内床面のほうが高くなる傾向にあります。これは、建築物の基礎や壁体などの間で共振現象が起こり、振動が増幅するためです。

以上から、正解は(1)となります。

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