ビル管理士試験 2021年 問105 問題と解説

 問 題     

空調技術に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 事務所建築におけるパーソナル空調では、冷房用に天井、床、デスク等の吹出しが採用されている。
  2. ナイトパージとは、夜間の外気を取り入れることで、空調機の冷房負荷を削減するものである。
  3. 自然換気を併用するハイブリッド空調とは、穏やかな気候時の外気を積極的に室内に導入して冷房に利用するものである。
  4. タスク・アンビエント空調とは、タスク域の温熱条件を緩和することで省エネルギー性の向上を図るものである。
  5. 細霧空調とは、ミストの蒸発潜熱で周りの空気温度が下がる現象を利用した空調システムである。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

過去の出題傾向からいえば見慣れない用語が多く登場するので、やや難しい問題です。ただし、どれも新しめな技術であり、これから普及してくるであろうことを考えると、今後似たような出題が増えるかもしれません。

(1)は正しいです。パーソナルは「個人の」や「私的な」という意味があります。よって、パーソナル空調というのは、空間環境を個別化することです。よって、室内の各個人のスペースにおける天井、床、デスクなどに吹出口を設け、その人に合った風量・風速での空調を行います。

(2)も正しいです。気密性の高い建築物では、夜でも室内の温度が下がりにくく、空調機の冷房負荷は大きくなります。そこで、空調機のみに頼らず、夜間の涼しい外気を取り入れることで室内の温かな空気を追い出し、空調機の冷房負荷を削減するというシステムが、ナイトパージです。

(3)も正しいです。ハイブリッドというのは、別種の2つ(以上)のものを組み合わせて1つの役割を果たすものを指す言葉です。たとえばハイブリッド車なら、エンジンと電気モーターという2つの動力源を持っていて、これらを組み合わせて使っています。

今回の問題となっている自然換気を併用するハイブリッド空調とは、自然換気と機械換気の両方の性質を組み合わせた空調のことを指します。その特徴の一つとして、記述の通り、穏やかな気候時の外気を積極的に室内に導入して冷房に利用することが挙げられます。

(4)に関して、タスク(仕事・作業)とアンビエント(周囲)を組み合わせたこの用語は、タスク域(作業を行う場所)とアンビエント域(それ以外の場所)を分けて考え、それぞれの温熱条件に合った空調を行うというものです。

もう少し具体的に説明すると、室内におけるタスク域というのは主にデスク付近のことで、人やパソコン、ライトスタンドなど熱を発生するものが多くあります。

一方、アンビエント域というのはデスクがない部分(室内の通路や空いたスペース)のことで、ここには人がいることも少ない上、OA機器などもないので熱くなりにくいです。

このとき、タスク域は強めに冷やして、アンビエント域は緩やかに冷やすというような緩急をつけることで省エネルギー性の向上を図るのが、タスク・アンビエント空調です。

ここで(4)を見ると、「タスク域の温熱条件を緩和する~」とありますが、緩和しても問題ないのは「タスク域」ではなく「アンビエント域」です。よって、(4)の記述が誤りなので、これが正解となります。

(5)は正しく、細霧空調については記述の通りです。水分は蒸発する際に周囲から蒸発潜熱(気化熱)を奪うので、周囲の空気は逆に冷やされます。細かいミストは大きい水滴よりも蒸発しやすいので、これを利用してどんどん気化熱を奪うことで周りの空気温度が下げるのが、細霧空調システムです。

以上から、正解は(4)となります。

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